将来のスター候補が勢ぞろいする「フューチャーズ・ゲーム」が、オールスター戦の2日前にワシントンDCのナショナルズパークで行われた。成長著しいマイナーの若手有望株を見るのは楽しいもの。筆者が注目したのはケストン・ヒウラ内野手(21)だった。現在、ブルワーズ傘下2Aビロキシーに所属し、同球団傘下の有望株ナンバーワンに格付けされている期待の選手だ。昨年6月のドラフトで、カリフォルニア大学アーバイン校から1巡目全体7位で入団し、昨年はルーキーリーグで打率4割3分5厘、途中から1Aに昇格し打率3割3分3厘の好成績を残した。2年目の今季は上級1Aからスタートし途中から2Aに昇格と、とんとん拍子にステップアップしている。

 ヒウラはカリフォルニア州生まれの日系人の父と、ハワイ生まれの中国系米国人の母を持つ。フルネームはケストン・ウィーヒン・ナツオ・ヒウラ。生まれ育ちが米国で日本との接点はほとんどないと思うが、意外にも打撃フォームは非常に日本的だ。

 米国の打者の多くはノーステップの打撃フォームで、打撃時の動作が小さいのが主流。15年新人王で16年MVPのカブスのクリス・ブライアントも先日「あらゆる打撃動作を極力少なくするように工夫している」と話しており、打撃動作を減らす傾向は年々強まっているように思う。

 しかしヒウラは、非常に動きの多い打撃フォームをしている。構えたバットを小刻みに動かし、つま先を動かしてタイミングを取り、左足を高く上げる。スイングはアッパー気味だが、フィニッシュは米国の強打者に多く見られるような片手ではなく、両手でバットを握ったままフィニッシュする。米球界のトレンドに反したその打撃フォームはマイナーリーグでも珍しく、米メディアに問われてこう語っている。

「僕のスイングは、高校時代からむしろ徐々に動きが大きくなっている。多くの人が、それでなぜ打てるのかと言う。でも僕には、これが合っている。このスイングが僕の間合いを作る。必ず両手でフィニッシュするのは、スイングスピードとパワー増のためで、これによって広角に強い打球が飛ばせる。速球への対応は問題ない。どのタイミングで始動すればいいかつかめばいいだけだから」。

 米国の生まれ育ちとはいえ、身長180センチ、体重86キロと体格は小柄。他の選手と肩を並べるパワーを生み出すには日本的なスイングにする必要があったのかもしれない。そのスイングは、1Aまではまったく問題なく通用し、現在の2Aレベルでも今のところ好成績。日本の打者がメジャーに挑戦する場合、足上げをやめノーステップにすることが普通になってきているが、ヒウラが今後さらに上のレベルでも通用すれば、常識を覆すことになるかもしれない。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)