8月半ばからリリーフに配置換えとなったドジャース前田健太投手(30)について、米メディアでは球団と契約を結びなおせばいいのではという声も出ている。

前田は2016年1月に球団と8年契約を結んだ際、基本年俸を抑えて細かい出来高契約を付けており、その中には先発登板数による出来高が盛り込まれている。15と20先発登板到達でそれぞれ100万ドル(約1億1000万円)、25と30、32先発登板でそれぞれ150万ドル(約1億6500万円)だ。前田をリリーフに配置換えすることは、その出来高獲得の機会を奪うことになってしまう。

ロサンゼルス・タイムズ紙のドジャース番アンディー・マッカラー記者がツイッターで伝えたところによると、ドジャースは今季開幕前、前田をシーズン通してリリーフに固定することも検討したそうだ。ちょうど球団は、シーズン途中でレンジャーズから移籍しFAとなったダルビッシュ有投手(32)との再契約も浮上しており、仮にダルビッシュが先発ローテに加わった場合はローテがあふれることになるため、前田の配置換え案が上がったようだ。

しかし同記者によると、前田をリリーフでフルシーズン起用することは「邪悪な選択」と、ある球団幹部が口にしたという。契約社会といわれる米国では、あらゆることが契約書で細かく取り決められるが、契約で決められた出来高の機会が与えられるか否かは、首脳陣の裁量次第となっている。出来高獲得の機会を奪うことは、フェアではないという意識があるようで「邪悪な選択」と表現したようだ。

エンゼルスでも昨季、この出来高にからむ起用の問題が起こった。昨季はチームにバド・ノリス(33=現カージナルス)とジェシー・チャベス(35=現カブス)両投手が所属しており、ノリスはもし60試合に救援登板すれば50万ドル(約5億5000万円)の出来高が付くことになっていた。

一方のチャベスは、22試合と24試合の先発登板達成でそれぞれ25万ドル(約2750万円)の出来高を獲得することになっており、8月を終えた時点で先発登板は21試合と、出来高獲得まであと1試合という状況だった。しかし9月にスポット先発が必要になった際、首脳陣はチャベスではなくノリスを先発させることに決め、これによってノリスは救援登板60試合にわずか届かず、チャベスは先発登板22試合に届かず、どちらも出来高を獲得できなかった。

この出来事は米メディアで批判的に報じられ、球団首脳陣の裁量で選手の出来高がコントロールされるべきではないとの声が上がった。選手会も恐らく、黙ってはいないだろう。

前田の場合は、ちょうど先発20試合に到達した時点でリリーフへの配置換えを行っており、ある程度の配慮はあったのかもしれない。今後、球団と契約を結びなおし、救援登板の出来高を新たに付けることは可能だろう。ただし前田自身は出来高とは関係なく先発にはこだわりがあるだろうし、来季以降もジレンマは続くかもしれい。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)