アンディ・ペティット氏
アンディ・ペティット氏

ヤンキース田中将大投手(31)が、球団特別アドバイザーでスプリングトレーニング臨時コーチを務めるアンディ・ペティット氏(47)からカッターを直々に伝授されたという。カッターとは、日本でいうところのカットボールのことだ。

ヤンキースの投手でカットボールといえば通算652で歴代セーブ王のマリアノ・リベラ氏(50)があまりに有名だが、ペティット氏も現役終盤でカットボールの威力を増し、華麗な復活を遂げた経歴がある。大ベテランになってからのペティット氏にとってはカットボールがまさにトレードマークであり、それによって41歳までヤンキース先発ローテの一角を担う息の長い投手になれた。

ペティット氏のカットボールは、昨季限りで引退したヤンキースの元エースCC・サバシア氏(39)も復活させている。

09年にFAでヤンキースに移籍し、先発の大黒柱として長年活躍したサバシア氏は、30代に入ってから膝痛に悩まされ、球速も大幅に落ちて大不振に陥った時期があった。膝のためにと過剰なダイエットで激やせしたこともあったが、それでも痛みは治らず、33歳だった2014年にはわずか8試合の登板で離脱し手術を受けた。その後復活を目指したがかつてのような投球ができず、2015年のポストシーズン中にアルコール依存症であることを公表し治療に専念。波乱に次ぐ波乱の30代を送り、現役続行を危ぶまれる状態だったこともあった。

そんなときにサバシア氏を救ったのが、ペティット氏から伝授されたカットボールだった。ペティット氏とリベラ氏では同じカットボールでも握りが違うそうだが、サバシア氏はペティット氏の握りを使い、投げ方のレクチャーを何度も受け、リリース時の指の使い方はリベラ氏からアドバイスを受けるなどして、完璧なカットボールに仕上げたという。その新球が起死回生のきっかけとなり、2016年には9勝12敗と負け越しはしたものの防御率は3・91と4年ぶりに3点台をマーク。翌シーズンには14勝5敗、防御率3・69と大復活を遂げた。

田中も、このキャンプでペティット氏からそのカットボールの握りを教わり、習得に取り組んでいる。MLBのデータサイト「ファングラフス」によると、田中は2015年にはカットボールを11・1%、2017年には9・5%使っていたが、昨季は1・6%程度だった。今季はそれがどれくらいの割合になるのか。オープン戦登板ではすでに試し、感触は上々のようだ。昨季は1試合12失点を喫した試合もあり11勝9敗、防御率4・45で、オフの間には「(シーズン)ずっと苦しんだ」と振り返っていただけに、今季にかける思いは強い。この新たな取り組みが、今季の田中の鍵になるのかどうか、注目したいところだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

ヤンキース田中
ヤンキース田中