コロナ禍の中での異例ずくめのシーズンが始まった。画面を通して試合を見ているだけで、これまでのMLBとは違うものを感じる部分もあれば、あまり変わらないと思う部分もある。

例えばハイタッチは新型コロナウイルス感染防止の新ルールで禁止になり、タッチをするジェスチャーだけで実際はタッチしないチームもあるが、仲間が本塁打を打った後にダグアウトの中で今まで通り普通にハイタッチをしているチームもあった。ベンチ内では選手らが距離を取るルールだが、普通に密な状態になっているチームもある。

投手は登板中の指なめが禁止されたが、こちらはかなり厳格に守られている印象だ。すべての試合を見ているわけではないが、見る限り指をなめることはもちろん、無意識になめそうになるといった様子も目にしない。汗をかきやすい暑い季節なので今のところその点は苦労がなさそうだ。

選手が最も抵抗感を口にしていた「唾はき禁止」については、守られているのかどうか注目して見ていたが、これもテレビに映る範囲では見かけない。その代わり、ガムをかんでいる選手は増えたのではないだろうか。唾はきとともにひまわりの種や落花生の殻を吐き出すのも禁止なので、口寂しいのだろう。エンゼルスのマイク・トラウト外野手(28)もかんでいた。口に含む物の中で唯一許可されているのがガムなので、これは自然な流れといえる。

メジャーでは、ガムも10年以上前はかみ終えるとそのまま吐き出して捨てるのが当たり前だった。はき捨てるのはダグアウトの中、ダグアウト裏の通路や階段、グラウンドの土の上など、選手が使用するありとあらゆる場所。ガムなので当然くっつくので、取材のため練習中にダグアウトやグラウンドに行くと、必ずといっていいほど靴の裏にガムがベットリついていた。何度も経験し気を付けていても、思わぬ場所に落ちており、完全にはどうしても避けられない。それほど多量のガムが落ちていたのだ。

それが、気が付いたらいつの間にかガムのはき捨てがなくなっていた。後から聞いたところによると、踏んづけ被害があまりにもひどいためか、ある時からガムをはき出すことが禁止になったそうだ。ここ10年くらいはガムを踏んづけることも一切ない。ひまわりの種や落花生の殻のはき捨ても、案外これを機にMLBから完全になくなるのかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)