フライボール革命やシフトの導入などで劇的に進化した最近のMLBだが、そのトレンドも再び転換期を迎えるかもしれない。現在のMLBのプレースタイルに、変化を求める声が高まりつつある。

マーリンズのドン・マッティングリー監督(59)が、昨年12月にシーズン総括のリモート会見を行ったときもそうだった。球団にとって17年ぶり3度目のポストシーズン進出を果たしたばかりだったが、口から出てきたのは意外にも嘆きばかり。「地区シリーズで敗退した後、自宅でポストシーズンの試合をたくさんテレビ観戦したが、正直に言って見ているのがきつかった。何も起こらない。三振、三振、ホームラン。見ていられない」と話し「我々はもっと、試合に動きを出すべきではないか。人々が見たいと思うような“商品”をグラウンドで提供し続けなければならないと思う」と意見した。

本塁打、三振、四球はここ10年間、増加の一途だ。この3つの昨季の割合は36・1%で、8年前と比べると約6%増となっている。

動きの少ない試合をどうにかしなければ。そんな今の機運に乗り、期待を集めているのが前カブス編成本部長のテオ・エプスタイン氏(47)だ。カブスの職を辞した後、ロブ・マンフレッド・コミッショナー(62)付のコンサルタントに就任。レッドソックス時代の04年にGMとして86年ぶりに、カブスの編成本部長としては16年に108年ぶりに、それぞれチームをワールドシリーズ制覇に導き、その実績で期待されているのはもちろんだが、同氏が以前から語っている野球理念が、今後の球界に影響を及ぼすかもしれないと期待が膨らんでいる。

コンサルタント就任に際しても同氏は「私たちは、野球が進化していく中で、ファンにとって試合をより楽しめる動きの多いものに変わるよう全員で取り組む。野球は特別なスポーツ。関係各所と連携し、野球を最高バージョンのものにしていきたい」と声明を出した。かつて、野球で効率性を追求すると美しさが失われると語ったこともある。昨年は「個人的な意見として、野球で最高の試合は、インプレーの時間が長く、その中で素早い動きがたくさんあり、多くの野手がからんだもの。例えば二塁打、三塁打、盗塁が多い試合だ」と話していた。

試合に動きを作るため、シフト規制などは導入の可能性が高いだろう。打球を上げてシフトの頭を越えることを重視してきた打撃は、コンタクト重視に変わるかもしれない。MLBは今年12月1日で現在の労使協定が終了し新たな協定に移行するが、そのタイミングでさまざまな変更が行われる可能性がありそうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)