エンゼルス大谷翔平投手(26)が本塁打王争いをする中、球場のフェンスの向こうでは、大谷のホームランボールを巡る熱い争奪戦が展開されている。

4月25日に放った今季7号までの7本で、観客の手に届く場所に「着弾」したのが6本あるのだが、そこには争奪戦とそこから生まれるドラマが繰り広げられていた。

まず同21日の今季5号、日米通算100号メモリアル弾をキャッチしたのはエンゼルスのユニホーム姿で観戦に訪れていたレオナルド・フィゲロアJr.さん(27)。着弾付近の数人が捕球を試みたが捕れず、落ちたボールの奪い合いに勝ったのがフィゲロアさんだった。24日の今季6号は唯一、観客の手の届かない場所に着弾したが翌25日の今季7号は、観客のいるエリアに飛び、数人がキャッチを試みた。ただし誰も捕球できず、ホームランボールは床に落ちて予想外に大きくバウンドし、手の届かない客席の隙間へ落ちてしまう残念な結末となった。

13日の敵地でのロイヤルズ戦で今季4号を放ったときは、ドラマがあった。右中間のフードコートエリアで、エンゼルスのユニホームを着た男性ファンが落下地点のほぼ正面でグラブを構え捕球しようとしたその瞬間、ロイヤルズのユニホームを着た若い男性ファンが目の前に割り込み、ジャンプして打球を奪い取ってしまったのだ。ロイヤルズユニホームの男性は両腕を天に突き上げ、ドヤ顔で大興奮。そばにはエンゼルスユニホームを着てグラブを持った小学生低学年くらいの男の子がおり、悔しい気持ちを堪えて捕球した男性ファンに祝福のグータッチをしにいったが、捕球した男性はあまりの興奮で男の子にも気づかない様子だった。

大谷ホームランボール争奪戦には、まさかの“プロ”もいた。

4月9日、フロリダ州ダンイーデンで行われたブルージェイズ戦でメジャー通算50号となった今季3本塁打目を捕球したファン、グレッグさん(31)がそうだ。この試合でボールを捕球した時、エンゼルス帽を被りグラブを持って外野のコンコースにおり、一見ごく普通のエンゼルスファンに見えたが、実は「ボールホーク(ボールを狙うタカ)」と呼ばれるボール狙い専門の野球ファン。グレッグさんはそれまで、440を超えるMLBの試合に出没し、通算3600個以上のホームランボールなどの打球を捕球したという。大谷のボールを捕球したときも、確かに落下地点で正確な位置取りをし、捕球の仕方も手慣れた様子。さすが「プロ」だった。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)