MLBで粘着物質の取り締まりが始まってから、米球界が揺れている。6月22日にはナショナルズのベテラン右腕マックス・シャーザー(36)がフィリーズ戦の4回に3度目の粘着物チェックを受けてキレ気味に、「調べたいなら全部脱ぐ」とズボンのベルトを外す騒動があった。アスレチックスのベテラン右腕セルジオ・ロモ(38)も同じ日に、レンジャーズ戦でチェックを受ける時、ズボンを腰の下まで半分脱いで見せて話題になった。翌23日には、今度はシャーザーがフィリーズのブライス・ハーパー外野手(28)の髪がべとついて怪しいので調べろと、冗談交じりに審判団に訴えるという出来事もあった。

北米スポーツメディアには「粘着物の取り締まりは、サーカス状態でカオス(大混乱)。長くは続かないだろう」と論じるものもあれば、取り締まりに賛成の声もあり、シーズン途中でこれを導入したマンフレッド・コミッショナーを露骨に批判する声も多くなった。シャーザーも「何がしたいのか、コミッショナーに聞いてくれ」と憤慨していたが、元ブレーブス投手で解説者のピーター・モイラン氏(42)は「マンフレッドはもはやジョークだ」と侮辱的な言葉さえ使っていた。コミッショナーがここまで酷評されるのは、これまで見たことがない。

そんな中、粘着物質取り締まり騒動に便乗する人も現れた。何と、米国のアダルトサイトが「タダで脱ぐのはもったいない」と10万ドル(約1100万円)のオファーを出しているという。スポーツのポッドキャストやYouTubeコンテンツを制作している「ジョンボイ・メディア」が伝えたもので、米アダルトサイト大手の「CamSoda」が「全部脱ぐ」と言ったシャーザーと腰まで脱いだロモに、1時間のウェブショー内でベルトを外しズボンを脱ぐパフォーマンスをしないかとオファーする手紙を出したそうだ。

この2投手の他、ヤンキースのコール、メッツのデグロム、ドジャースのバウアー、フィリーズのウィーラー、そしてパドレスのダルビッシュにまでオファーを出しているという。ジョンボイ・メディアはオファーの手紙も公開しており、そこには「オファーは今季いっぱい有効です。ご連絡をお待ちしています」とあった。この7人の投手に実際にオファーが届いているかは不明だが、何ともばかばかしく、米国らしいというべきか。しかしこんな方面にも騒動が飛び火するとは、まさにカオス。コミッショナーへの罵詈(ばり)雑言を見ると、末期的ではないかとさえ思えてくる。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)