スプリングトレーニングが近づくMLBでは、各球団が今季から導入される新ルールへの対策を進めている。特にこのところ話題に上がっているのが、投手の投球時間制限「ピッチクロック」対策だ。

例えばフィリーズでは、キャンプ施設のブルペンやフィールドにタイマーを設置し、制限時間を設定して投球練習やフリー打撃の登板を行うという。新ルールでは、投手はボールを受け取ってから投げるまで走者なしで15秒以内、走者ありで20秒以内に投げることが決まっている。過去のデータで見ると、フィリーズの投手陣では走者なしで平均投球時間が規定を超えているのは2人、走者ありでは3人と多くはないが、ボーダーラインぎりぎりの投手を含めるとかなり増えるため、やはり対策は必須。トムソン監督は「投球間にボールを受け取って気持ちや集中力をリセットしてサインを確認してと多くの作業をこなす中で、体内時計を合わせておくことが大事」と話している。

パドレスのメルビン監督も投手陣がピッチクロックにどうアジャストするかが気掛かりだと話していた。ジ・アスレチックスのインタビューでダルビッシュ有投手(36)と早い段階で話し合い、オフシーズン中の投球練習もタイムを計りながら取り組んでいることを確認しているという。だが「ルールを頭で理解していても実際、試合になってみないとどうなるか分からない。適応する期間が出てくるだろう」と慣れるまでに時間がかかると予想していた。

選手や球界関係者からは、導入が決定した今も懸念の声が聞こえてくる。選手会の役員として新ルール導入時の詳細を知るレッドソックスの先発右腕ニック・ピベッタ(29)はボストンの地元メディアで「ほとんどの選手が新ルールに反対の票を投じたが、結局はMLB側の独断で、我々の意見が反映されなかった。投手は誰も変更を歓迎していない」と明かし「15秒は3回1死で2アウトまで追い込んだときなら問題ない。だが1死二、三塁でカウント1-2という状況なら、相手打者によってはあと数秒がさらに必要という時がある。考えて集中するのに、もう1分欲しいというときがある」と話していた。敏腕代理人のスコット・ボラス氏も「ポストシーズンには、ピッチクロックを排除すべきという瞬間が確実に存在する。勝負を左右する大事な場面だ。そんな場面で投手をせかしてはいけない」と主張している。

試合時間短縮のために導入されるピッチクロック。昨季のマイナーの実験導入では、これによって試合時間が平均約26分短縮されたという。メジャーでは果たしてどうなるか、今季が注目される。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)