昨年のちょうど今ごろ、FA市場の一番の大物だったアーロン・ジャッジ外野手(31=ヤンキース)の動向がSNSで話題になっていた。ジャッジがベイエリアにいたというファンの目撃情報がX(旧ツイッター)に投稿され、当時獲得に熱心だったジャイアンツとの交渉でサンフランシスコを訪れていると臆測されたものだった。

今、SNSを賑わせているのは去就が注目されている大谷翔平投手(29=エンゼルスFA)の動向だ。「ショウヘイがドジャースのチームチャーターに乗ってロサンゼルスに降り立ったぞ」、「ショウヘイが今、シカゴに到着したよ」といった投稿を目にする。これらの情報は、もちろんどれもフェイク。投稿には大谷が飛行機をバックに立っている写真が使われているのだが、それは今年3月に大谷が侍ジャパンに合流するためチャーター機でアリゾナから出発する様子をインスタグラムに投稿したものだ。それをそのまま流用したり、コラ画像にして使ったりしている。

ただしこれらは明らかにフェイクと分かるものばかり。大谷の契約交渉に関する情報は代理人のネズ・バレロ氏が各球団にリークしないよう通達しているらしいので、今のところ具体的な情報は何一つ出ておらず、情報に飢えているファンがネット上のネタとして楽しんでいるといった状況だ。

しかし今後、契約交渉が進んでいくと、紛らわしいフェイクニュースやニセ記者が出現する可能性はある。MLBのストーブリーグでは毎年のように、ケン・ローゼンタール記者やジェフ・パッサン記者のような有名記者のなりすましXアカウントが登場し、ニセ情報を流すということがよく起こる。米国のメディア関係者でさえ、ニセ記者のニセスクープにだまされることもあるほどで、かなり紛らわしい。

また本物の記者が誤情報を流すこともある。昨オフには、ニューヨーク・ポスト紙のジョン・ヘイマン記者が12月上旬に「ジャッジがジャイアンツへ行くようだ」と速報し、野球界周辺が色めき立つ騒動があった。その翌日には「ジャイアンツは、ジャッジから何も聞いていないと言っている。フライングして申し訳ない」と謝罪し、約2週間後にはジャッジがヤンキースと再契約に合意している。米記者間の激しいスクープ合戦に勝ちたいという思いが、不確かな情報を流してしまったのかもしれない。ヘイマン記者は本来はスクープを次々に飛ばす敏腕として知られている。今オフは前田健太投手(35=ツインズFA)がタイガースと2年契約を結んだニュースが飛び込んできたばかりだが、これも第一報を伝えたのはヘイマン記者だった。

いずれにしろ、去就に関するフェイクニュースは思わぬところからも出てくるので気を付けようと、自戒の念を込めてつづっておく。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)

大谷翔平(2023年9月撮影)
大谷翔平(2023年9月撮影)