カリフォルニア州知事が約4000万人の住民に外出自粛の要請してから、2日が経過した。ロサンゼルスの自宅でニュースを見た当時は、新型コロナウイルスの感染状況がここまで急激に悪化しているのかと思い、不安が一気に押し寄せてきた。ただこれは、最悪の事態を少しでも緩和するために州知事が下した決断。辛抱の時だと冷静に受け止め、やれることをやっていくしかない。

外出自粛の状況で、野球少年たちはどうしているのか? と疑問に思った。今は友達と大勢で遊んだり、公園に集まって野球の試合をしたりすることも容易には出来ないだろう。素振り、キャッチボールやノックなど、個人か少人数でのアクティビティに限られ、悶々(もんもん)とした日々を送っているのではないだろうか。

ふと自分の中学時代を思い出した。野球部に所属していたが、中高一貫校でグラウンドを多くの部で共有していたこともあり、中学野球部は練習できないことが多かった。自宅へ帰り、自主練習に励んだ。役に立ったのが「壁」だった。至近距離からボールを投げ、ひたすら捕球を繰り返した。ハーフバウンドやバックハンド、壁の横から角度をつけて投げ、跳ね返ったボールをランニングしてキャッチする練習など、1人で熱中していた記憶がある。

「壁当て」といえば、エンゼルスでは大谷翔平投手(25)がよく行うルーティンだ。キャッチボールを終え、黙々と壁に向かって投げる姿は今キャンプでも多く見られた。地道な練習ではあるが、その都度、必ず目的はあるはずだ。投手でも、野手でも、個人練習として工夫ができる「壁当て」は、万能な自習練習のメニューだと思う。

新型コロナウイルスの感染拡大防止へ対策が続く中、先行きはまだ不透明だ。生活環境の不便さはあるが、それぞれの目的に向かって、できることはある。子供の頃の体験と野球の取材を思い出し、地道でも少しずつ活動していくことの大事さを再確認した。【斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)