DeNAで昨年10勝を挙げたトレバー・バウアー投手(32)が年明け早々、メジャー復帰に並々ならぬ意欲を見せた。4日はFOXテレビ、5日はニューヨークのラジオ局WFANに出演。刑事では不起訴、民事では和解した性的暴行疑惑を否定するとともに、かつての生活態度には反省の意を示した。

以前から、野球に対しては、技術を追求するなど真剣な態度だった。しかし、私生活では気軽に性的関係を持つなど、野球ほど注意を払っていなかったという。壁をつくっていたメディアへの応対も「大人げなかった」と、考えを改めたという。

ラジオでは、30分近く性的暴行疑惑の話題が続いた。DJから「私には娘がいる。あなたがヤンキースに入団したら、どう娘に説明していいのか分からない」などと問われた。過去を後悔しながらも「セカンドチャンスを与えてほしい」と訴えた。

ニューヨークの番組だけに、前回FAとなった際に、本拠地を置くヤンキースとメッツではなく、西海岸のドジャースを選んだ理由も、執拗(しつよう)に問われた。ロサンゼルス出身だけに、小さい頃からの憧れを理由に挙げたが、責められているようで、なんだか気の毒でもあった。

不仲説がささやかれていたUCLA時代のチームメート、ゲリット・コール投手(ヤンキース)との関係も問われ、特にわだかまりはないとした。

まだ、メジャー球団のどこからもオファーがない現状を説明した。それだけに、20年にサイ・ヤング賞を獲得した力量が衰えていないことを強調した。「私は世界でトップ15人に入る投手だ」と断言。通常の年はシーズンが9カ月あり、3カ月をトレーニングに充てているが、出場停止期間中に18カ月連続でトレーニングしたことで最高球速が自己記録更新の99・4マイル(約160キロ)となり、平均も14年に匹敵する94・4マイル(約151・9キロ)になったとした。

日本でプレーしたことで、球種も増やしたという。メジャーでは少ないが、日本では多くの投手が投げるスプリットを習得。「山本(由伸)にも試合前に15分ほど話してコツを聞いた」と明かした。

ちなみに、ドジャースに移籍した山本については「信じられない。4シーム、スプリット、大きなカーブ、カッター、スイーパースライダー(横に大きく曲がるの意)を投げる。エリートなスイーパーは大きく曲がり、スピンが利いている。速球はバックスピンが利いている。小柄なので低い角度からくる。制球もいい」と絶賛した。

23年シーズンを過ごした日本については「私は日本を愛している。人もファンも素晴らしい。ベイスターズは大歓迎してくれた。とても素晴らしい経験だった」と話した。文化の違いをいい経験としたが、異国で暮らすことで、友人や家族と離れる寂しさも口にしていた。

バウアーのメジャー復帰希望の強さは揺るいでいないが、FA市場は中盤戦を迎えている。近年のMLBは、ソフトバンクのオスナのように、グラウンド外での問題が発覚すると、実力だけでは契約が決まらない側面がある。バウアーは昨年、私も球場で力量を目の当たりにしただけに、行き先がどうなるか注目している。【斎藤直樹】

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「斎藤直樹のメジャーよもやま話」)