今オフ、注目を集めてきた日米間における新ポスティング制度の交渉が無事に締結され、日本ハム大谷の移籍交渉が、いよいよ本格的にスタートすることになりました。新制度は、事実上「大谷ルール」と呼ばれる内容で、大谷に限っては12月1日(日本時間2日)から22日(同23日)まで21日間の交渉期間が設定されました。

 今回このような特別ルールになった裏には、メジャー球界のFA(フリーエージェント)市場の動きを懸念する思惑があります。当初はほぼ全球団が大谷獲得を検討していると言われていましたが、現実的には20球団前後で、最終的に直接交渉のテーブルに就くのは、約10球団と見込まれています。もっとも、今オフ最大の目玉であることは間違いなく、大谷の移籍先が決まらない限り、どの球団も補強策を進めにくい実情があるのです。

 特に、FAとなったダルビッシュ(前ドジャース)、アリエッタ(前カブス)、コブ(前レイズ)らトップクラスの先発組は、冷静に大谷の動向を見守っているはずです。というのも、ダルビッシュ級の先発陣は、5年~7年の複数年、総額150億円前後の超大型契約が見込まれています。その一方で、大谷獲得には最大2000万ドル(約22億円)の譲渡金が必要とはいえ、マイナー契約のため、総額で安価に抑えられるため、どの球団にもチャンスが残されています。もちろん、大谷を度外視して、ダルビッシュらを最優先のターゲットとして交渉する球団はあるでしょうが、他球団の思惑が把握できない状況で、条件面などの比較をすることは、やはり得策ではありません。

 現実的には、大谷の移籍先が決まった後、大谷を逃した球団で資金力のある球団が、ダルビッシュら「特Aクラス」の先発陣との本格交渉を進ものと見られています。大谷の場合、打者としての評価も含まれるため、ア・リーグのDH市場にも少なからず影響を与えそうです。

 いずれにしても、水面下では、各球団の間で大谷、ダルビッシュらの獲得へ向けてシュミレーションが進められています。

 「大谷ありき」でスタートしたメジャーのオフシーズンは、例年以上に長く、ダイナミックな動きになりそうです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)