メジャーの公式戦が開幕し、米国で18年目のシーズンを迎えるイチローも、古巣シアトルで新たなスタートを切りました。

 今回は、アリゾナの春季キャンプを訪れ、イチローの試合や練習ぶりを取材した山下大輔氏(66=元横浜ベイスターズ監督、野球評論家)に、「変わらぬイチロー」について語っていただきました。

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 2年ぶりに再会したイチローの第一声と笑顔が、とても印象的だった。

 マリナーズのユニホーム姿に「やっぱり似合うね」と声を掛けると、イチローは「全然、こっちがいいですね」と満面の笑みを浮かべながら即答した。契約交渉が長引き、アリゾナのキャンプに約3週間遅れで合流したとはいえ、マ軍に戻れた喜びが伝わってきた。

 動きを見る限り、44歳という年齢は、にわかに信じられない。一般的に、年を重ねると、関節が硬くなっていく。だが、イチローの場合、柔軟性は変わっていないし、筋肉が硬くなっている感じもない。かつて、盗塁王リッキー・ヘンダーソンの晩年を見たことがあるが、イチローのスピード、守備力、肩などははるかにいい状態にある。自分の健康状態をイチロー自身が一番分かっているからで、メジャーでプレーしていくうえで不可欠な体調管理を徹底してきた結果だろう。そこにいたるまでの努力は「超スーパー」なレベルであり、尊敬という言葉でも言い表せないほどだ。

 2009年からドジャースの1Aのコーチをしていた当時、マンツーマンで指導したディー・ゴードンが、同僚のイチローを「先生」として慕っているのもよく理解できる。ゴードンが「四球を増やしたい」と相談した際、イチローは「まず打つこと」と答えたという。その言葉に、ゴードンが何を感じるか。走攻守だけでなく、精神面の強さ、考え方に、イチローの選手として価値がある。

 ユニホームを着ている限り、イチローには「ハングリー」に近い気持ちがあるのだろう。移籍会見で「最低50歳まで」と言ったが、今のイチローには、最終目標などないような気がしてならない。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)