ここまで機構と選手会の間で、報酬面や試合数に関してすったもんだがありましたが、とにもかくにも約4カ月遅れでようやくメジャーリーグが開幕しました。その間、交渉が泥沼化したこともあり、怒った一部のファンからは、SNS上で「開幕しても野球なんか見ない」などの声が上がっていました。

とはいえ、やはり米国のファンは「国民的娯楽」と呼ばれるベースボールに飢えていたようです。スポーツ専門局「ESPN」によると、23日(日本時間24日)に行われた開幕戦「ナショナルズ-ヤンキース」の試合は、2011年以降の公式戦では最多を更新する平均400万人の視聴者を記録しました(ニールセン社調べ)。

実況は球場内のブースではなく、同局のスタジオからでした。ゲスト解説のアレックス・ロドリゲス氏(元ヤンキース)は「なんだか不思議な感じだね」と話していましたが、視聴者にすればさほど違和感はなかったのでしょう。米国東部時間で午後8時30分のピーク時には、448万人まで上昇。激しい雷雨のため、6回途中コールドになってしまったのは何とも皮肉な結果ですが、昨年10月30日のワールドシリーズ第7戦以来、267日ぶりとなるライブ中継(オープン戦を除く)を心待ちにしていたファンがいかに多かったか、ということでしょう。

テクノロジーの進化で、今やテレビだけでなく、パソコン、タブレット、スマートフォンからでも、全米中の試合をライブ中継で観戦できる時代です。もし仮に、20年前にコロナ禍が起こっていたとすれば、週に数試合の全国放送と地元チームの試合だけで、ほぼ他地区の試合を見ることはできなかったでしょう。

感染対策でさまざまな制約がある中、リスクと背中合わせでも、全米中に野球のライブ映像を届けてくれるテレビ、ラジオのスタッフには、野球ファンの1人として拍手を送りたいものです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)