昨年12月以来、ロックアウト(業務停止)が続くメジャーでは、年が明けても新労使協定に関する交渉再開のめどは立っておらず、先行きが不透明な状況が続いています。

そんな中、機構が運営するMLBネットワークが、看板リポーターのケン・ローゼンタール記者を解雇したことが、球界内で話題を集めています。大物選手のトレードや契約などスクープを連発してきた腕利きの同記者は、専門サイト「ジ・アスレチックス」でコラムなどを執筆するほか、FOXスポーツで中継リポーターを務めるなど、米球界では最も著名なジャーナリストの1人として知られています。そんな同記者が、昨年、ロブ・マンフレッド・コミッショナーに対する批判記事を執筆・出稿した影響で、13年間所属した同局を解雇されたと報じられています。

この一報を機に、ファンやメディア内では、同記者への同情論だけでなく、マンフレッド氏に対する皮肉や同局の決断を批判する声が相次いでいます。そもそも米国は契約社会ですから、雇用主が契約を破棄することは珍しくありません。ただ、今回の場合、同記者の批判記事に対する「圧力」のようなイメージが持たれており、マンフレッド氏に対する不信感が広がっています。

スポーツと政治を比較することは筋違いかもしれませんが、昨年のノーベル平和賞を受賞したのは、ロシアとフィリピンのジャーナリスト2人でした。いずれも、国家権力の弾圧に屈することなく、「言論の自由」を守り続けた姿勢が評価されました。今回、ローゼンタール記者の解雇が注目される背景には、米国メディア内の「言論の自由」への危機感があるような気もします。

マンフレッド氏がまとめ役を務めるオーナー陣に対して、選手会側はこれまでにも不信感を募らせてきました。今回の記者解雇は、選手会の労使協定とは無関係ですが、ロックアウトで「圧力」を掛け続けているコミッショナーとオーナー陣の権威的な姿勢を見る限り、楽観視できない雰囲気になってきました。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)