メジャーのFA(フリーエージェント)市場が解禁となり、ソフトバンク、阪神で計5シーズンプレーしたロベルト・スアレス投手が、パドレスと5年総額4600万ドル(約64億4000万円)の好条件で再契約を結びました。

ベネズエラ出身のスアレスは、1度は野球から離れた時期もありましたが、メキシコでプレーした後、16年にソフトバンク入り。その後、阪神で2年連続セーブ王を獲得するなど、才能が開花し、31歳となった今季、パドレスで念願のメジャーデビューを果たしました。パドレスでは主に8回を任される絶対的なセットアッパーに定着し、ポストシーズン進出に大きく貢献しました。

スアレスに限らず、日本野球を経験して成長した選手がメジャーで活躍するケースは近年、着実に増えています。元巨人のマイルズ・マイコラス投手(カージナルス)は、オールスター出場2回のエース格として活躍しています。ソフトバンクなどでプレーしたニック・マルチネス投手(パドレスFA)は今季、ダルビッシュ、スアレスと一緒に中心選手として貢献。元日本ハムのクリス・マーティン投手(ドジャースFA)も、貴重な救援右腕として好成績を残しています。

野手でも、元巨人育成のアドリス・ガルシア外野手(レンジャーズ)は昨季31本塁打、今季も27本塁打をマークするなど、チームの主軸として活躍しています。

もちろん、選手本人の努力あってのことですが、真面目で練習熱心な外国人選手の場合、基本に忠実で練習量が豊富な日本野球を経験することで、潜在能力を発揮できるようになるのでしょう。パドレスがソフトバンクの秋季キャンプにコーチや選手、スタッフを派遣したように、メジャー球団が日本の指導・育成法に注目するようになったのも、スアレスら「逆輸入」選手の活躍が称賛されているからです。

かつて、日本球界の「助っ人」といえば、メジャーでプレー機会が少なくなった高年俸のベテラン選手が主体でしたが、近年はスアレスのようにポテンシャル重視の補強戦略が増えています。日本の指導法だけでなく、外国人選手のスカウティングが充実してきたことも、その背景にあるといえるでしょう。

チームの中心選手に成長した外国人選手を手放すのは戦力的には痛手でしょうが、メジャーで大きく羽ばたく彼らを応援している日本のファンも多いのではないでしょうか。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)