昨年8月以来、球団の売却案を進めていたエンゼルスのオーナー、アート・モレノ氏が23日に突然、計画を撤回することを発表しました。米メディアなどによると、買収先の候補として5グループが名乗りを上げ、その中で少なくとも3候補が史上最高額となる25億ドル(約3250億円)~30億ドル(約3900億円)を用意していたと伝えられています。有力候補の中には、日本人も含まれていたとも言われています。今回の売却案は、23年オフ、FAとなる大谷翔平投手の今後の処遇にも大きく影響するだけに、米国内でも注目されていました。

モレノ氏は「我々にはまだやり残したことがある」「ファンにワールドシリーズ優勝をもたらすという目標を達成したい」などのコメントを発表しましたが、計画中止の明確な理由は明らかにしていません。そもそも、エンゼルスの売却案は、昨年5月、球場周辺の土地買収とホテルなどを誘致する再開発計画が、アナハイム市長の不正汚職疑惑で立ち消えとなったことが伏線と言われています。さらに、モレノ氏の子息らが球団経営に消極的なこともあり、同氏が手放すことを決断したものと見られていました。

今回の売却中止が「完全消滅」なのか、「一時凍結」なのかは不明です。同氏が来季以降も所有するのか、今オフ再び売却先を探るのか。同氏の真意は定かではありません。これまで「ぜいたく税」の支払いを避けるため、総年俸を抑えてきた同氏が、なぜ、今になって球団史上最多の総年俸を容認し、保有継続を決めた理由もはっきりしていません。

今オフ、エンゼルスは先発左腕アンダーソン、強打者レンフローと契約するなど、積極的な補強を進めてきました。それでも、米メディアなどの最新のパワーランキングによると、同地区のアストロズ、マリナーズには及ばず、苦戦が予想されています。

とりあえず球団売却計画は沈静化しましたが、もし、今季もエンゼルスが早々と優勝争いから脱落するようなことになれば…。

来季以降、年俸5000万ドル(約65億円)とも言われる大谷のトレード話が、7月31日の期限前に再浮上することになりそうです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

大谷翔平
大谷翔平