MVPに輝いたエンゼルス大谷翔平投手(27)の目は、次なる目標として地区優勝、そしてア・リーグ優勝、さらに「世界一」に向いています。大谷の来季パフォーマンスとともに、肝心のチーム陣容も気になるところでしょう。大リーグは12月2日未明からオーナー側のロックアウトにより、トレードやFAなど契約交渉がすべて凍結されました。エ軍の戦力補強も一時ストップしていますが、ここまでの中間採点として、現時点の新陣容をこの年末の機会にまとめてみます。

まず、最重要課題である先発投手陣は、メッツからFAの右腕ノア・シンダーガード(29)を獲得。最速160キロ超の剛速球が武器で開幕投手を務めるなどエース経験もあり、大谷と剛腕コンビによる新2枚看板を形成します。また、レッズからFAの二刀流右腕マイケル・ロレンゼン(29)を獲得。レ軍時代は主にリリーフでしたが、エンゼルスでは先発を目指す予定。大谷との二刀流コンビがどう相乗効果を生むか興味深いです。

この先発2人の加入により、今季開幕投手を務めたディラン・バンディ(29)、先発陣の一角を担ったアレックス・カッブ(34)とは再契約しませんでした。その結果、今季開幕時の先発ローテーションで残ったのは大谷だけとなり、来季の顔触れは大きく変わります。

次に救援陣は、クオリファイングオファーを拒否し、FAで他球団への移籍が有力視されていた守護神の右腕ライセル・イグレシアス(31)と再契約しました。すでにメッツから救援左腕アーロン・ループ(34)も獲得しており、FA市場で最高のリリーバー2人の獲得によりブルペンを改善しました。大谷にとっても心強いです。

このように、ロックアウト前に4人の主力投手獲得に成功しました。チームの看板選手であるマイク・トラウト外野手(30)が望んでいたマックス・シャーザー(37)のような、球界を代表するエース獲得はまたも失敗に終わりましたが、ペリー・ミナシアンGMにとって上出来といえます。

ただし、これで十分な戦力補強かといえば、不安がないわけではありません。エース候補のシンダーガードは昨季、右肘手術により全休。今年9月の復帰後は2試合に登板しただけです。また、先発4番手候補のロレンゼンも最近6年間で先発は5試合だけ。今季は27試合すべてリリーフ登板でした。

そこで、今季と同じく先発6人ローテーションで臨み、新先発候補2人の保険という意味では、先発投手がもう1人欲しいです。FA市場には今季ホワイトソックスで13勝した左腕カルロス・ロドン(29)、ドジャースのエース左腕クレイトン・カーショー(33)、アストロズの右腕ザック・グリンキー(38)ら未契約。トレード市場では、ともにレッズのルイス・カスティーヨ(29)、ソニー・グレイ(32)らが獲得候補に挙がっています。

もう1つの懸案事項は、今年9月に解雇したホセ・イグレシアスに代わる正遊撃手です。FA市場にはアストロズのカルロス・コレア(27)、ロッキーズのトレバー・ストーリー(29)という大物2人が残っていますが、残念ながら獲得資金はなさそうです。すでに来季のチーム総年俸が約1億7200万ドル(約189億円)に達しており、今季の年俸総額約1億8000万ドル(約198億円)から考えると、予算は上限に近づいています。

残り少ない資金を頼りに、ロックアウト後にどんな選手を獲得できるかが見どころです。大谷の「勝ちたい」発言に応えるためにも、ミナシアンGMの手腕が試されます。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)