日米両球界でトップを走り続けてきたイチロー外野手(44)が、メジャー17年目、日米通算26年目のシーズンを終えた。マーリンズでは第4の外野手でもあり、出場機会は不規則だったが、代打としてメジャーの年間最多記録にあと1本と迫る27安打をマーク。不慣れな役割に対応する側面を見せた一方で、今もなお、レギュラーとしてプレーしようとする強い意志は変わっていない。「今年のMLB」で、絶妙に“変化”しつつも、本質的に“不変”であり続けたイチローの本音を探った。

 10月1日(日本時間2日)、本拠地マーリンズパークでの最終戦を終えたイチローは、メジャー17年目のシーズンを笑いながら振り返った。

 「運動不足。今日からトレーニングするわ。運動不足だもんね、本当に」

 イチローにとって、2017年は新たなことに気付く1年だった。136試合に出場したものの、先発はわずか22試合。基本的にベンチスタートで、代打や守備固めとしてグラウンドに歩を進める日々だった。イチローならではの「運動不足」という表現は、複雑でありつつも、率直な思いを凝縮したかのようだった。

 その一方で、イチローの打席は最終戦まで注目を集めていた。前日までに代打での年間安打を27本まで積み重ね、メジャー記録にあと1本と迫っていた。結果的に、今季最後の打席は左邪飛に倒れ、記録に並ぶことはできなかった。それでも、新たな境地に似た感覚も芽生えていた。

 「代打での安打数、記録と遭遇すると思っていなかった。数字自体も関心のあったものではなかった。ただやっていれば、こういうものに出合う。長いことやっていること、はそれなりに意義があると思いましたね。新しいチャレンジ、確実にそうでしたから」

 代打の安打記録が注目されることは本意ではない。だが、与えられた役割の中でベストを尽くした結果、メジャー記録に近づいたことが、「新たなチャレンジ」だった。

 これまで長年にわたり、主に「1番右翼」としてフル出場を続け、試合後は1日を振り返りながらグラブを磨いて帰宅するのが、日課だった。だが、今は打席数が限られ、守備に就く機会も激減した。その現実から目をそむけるつもりはない。だからといって、全162試合に出場しようとする姿勢は変わっていない。

 「他の選手がこうなったらどうなるのかは分からないですけれど、僕は人とはセンスが違いますから。体も違うし、何の問題もないですよ。ゲーム感覚としては何の問題もない」

 イチローは、これまで毎年、どこかの時点で自分本来の感覚を見つけ、その自信を糧に次のシーズンにつなげてきた。過去最少の50安打に終わった今季も、その感覚はイチローの体に舞い降りていた。

 「これまでいろんな場面でいろんな体験をして、それを乗り越えたり、乗り越えられなかったり、さまざまでしたけど…。それで見つけられなかったら、どうしようもないです。それを今回も見つけましたから、今の自分は嫌いじゃないです。うん」

 マーリンズとの契約が満了し、来季のイチローの行方は決まっていない。その一方で、全日程が終了した数日後、イチローは例年通り、トレーニングを再開した。無論、日米通算27年目の来季を「運動不足」で終わらせるつもりはない。【四竈衛】