原点に戻った。エンゼルス大谷翔平投手(23)が、マリナーズ戦に「5番DH」で出場。4打数2安打1打点で2試合連続のマルチ安打と打点をマークした。試合前にはマリナーズ会長付特別補佐に就任したイチロー(44)と対面。「野球教室に来た小学生が、いいところを見せようと張り切った気持ち」と、憧れの大打者の前で野球少年のようにフルスイングを貫いた。

 セーフコフィールドの左打席は特別なものだった。いつもテレビで見ていた。いつもイチローが映っていた。そこに大谷は立った。「ずっとテレビでの場所だった。同じ左のバッターボックスに立てたというのもそうですけど、すごいきれいな球場で」。舞い上がる気持ちを抑えられなかった。

 試合前にイチローと対面した。メジャー登録枠の25人から外れ、自身のキャリアに大きな区切りをつけたばかりのレジェンドは、あいさつに聞こえないふりをして、スルーした。大谷は一瞬驚いた顔をして、でも笑顔で追いかけて、しっかり握手してもらった。「野球教室に来た小学生が、すごく張り切って、いいところを見せようと。そういう気持ちだった」。岩手の大自然で白球を追い、野球の楽しさを知った。気候がよく似るシアトルで、まさかの“追いかけっこ”まで味わって、あの感覚を思い出した。

 2回の第1打席。敵地のブーイングを浴びる中、目いっぱいバットを振った。「変な感じでした。1打席目はあまり思い通りのスイングができなかった。アメリカに来て一番力んだ」。外角ツーシームに崩された格好となり、空振り三振した。

 挽回した。第2打席はツーシームを捉えて中前打。3打席目もチェンジアップを左越えの二塁打とした。イチローからは対応力を絶賛され「すごく光栄なことですし、僕のことについて話してくれるだけで、もうそれで満足」と喜んだ。

 ネクストバッターズサークルで、同僚プホルスの3000安打を見届けた。「すごい歴史的な瞬間を間近で見られて、僕自身は一生自慢すると思います。楽しんでプレーできました」と無邪気に言った。対戦はかなわなくとも、野球少年の気持ちは通じている。イチローが切り開いた道を受け継いで、大谷が投打二刀流の道を切り開いていく。【斎藤庸裕】