二刀流が復活した。エンゼルス大谷翔平投手(24)が、アストロズ戦で約3カ月ぶりに投手復帰し、2回1/3を投げ2安打2失点で2敗目を喫した。1回は順調に投球し、直球は最速99・3マイル(約159・8キロ)をマーク。2回にワンバウンドの打球を素手で捕りにいった影響で右手薬指の付け根に痛みを覚え、腰の張りの影響もあり、3回途中49球で降板した。右肘内側側副靱帯(じんたい)損傷で離脱し、6月6日以来の待望の投手復帰に、本来の自分に戻った喜びをかみしめた。

黒星を喫しても、試合後の大谷の表情はどことなく穏やかだった。88日ぶりに、メジャーの打者を相手に49球、腕を振った。「完成度も含めて、それほど高いわけではなかった」。2失点し、厳しい評価を自らに下しながらも口調は滑らか。「100を求めてはいますけど、なかなか難しい。次の登板で今日よりも良くなるように、そうやって進んでいきたい」と前を向いた。まず、マウンドに帰ってきた。それが大きな1歩だった。

全米中継、しかも4万人超の大観衆が見守る中、期待に応えた。15球目の直球は99・3マイル(約159・8キロ)を計測した。1回2死一、二塁。5番ホワイトを抑えた場面だ。「力を入れるつもりはなかった。やっぱり、人が入って上の舞台で投げるというところで、勝手に出力が上がった」。プロフェッショナルだから、歓声を浴びるとアドレナリンが出る。ましてやマイナーは回避しての、メジャーのマウンドだ。

「自分が思っていたよりも、緊張していた」。2回先頭、ピッチャー返しされたワンバウンドの打球にとっさに反応。「あまり手を出したことはなかったので、自分でもびっくりした。(手を)出さないという判断は、あの一瞬では難しい」。投手として致命傷になりうる右手を伸ばした。

待望の二刀流。純粋に、野球に夢中になった。右肘故障後、6週間ノースロー調整が続いた。「あの状態でも投げられた」と振り返る、受け入れがたい日々が続いた。球団のリハビリ計画を理解し、必死に前を向いた。地道に歩み、ようやくたどり着いたマウンドだった。打球を右手でつかみにいったのも、ただただ、勝ちたかったから。「1個のアウトを必死で取りに行く、そういう気持ちは大事かなと思います」。

1回を全力で抑えると、腰の張りを感じた。3回は右手の痛みと腰の張りも重なり球速が落ち、スプリンガーに2ランを浴びた。「甘くいった。そこは反省点」と悔やんだ。翌日の状態次第でもあるが、ソーシア監督は次回登板について「大丈夫だと思う」と明言。問題なければ中6日空け、再び日曜日の9日(同10日)に登板する見込みだ。復帰の第1歩を刻んだ大谷は「喜びはもちろんあります。今日の結果を受け止め、次回につなげられれば良い」。周囲の心配は消えたわけではない。それでも大谷は、大谷であるために、突き進む。【斎藤庸裕】