【テンピ(アリゾナ州)2月27日(日本時間同28日)=斎藤庸裕】これが「打者大谷」を苦しめた魔球だ。エンゼルス大谷翔平投手(24)のチームメート、トレバー・ケーヒル投手(30)が決め球の高速シンカーとチェンジアップの投げ方、握り、習得法など秘訣(ひけつ)を明かした。昨季はアスレチックスの先発として7勝。大谷との対決4打席で、無安打2三振に打ち取った決め球に潜入した。
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大谷との対戦を振り返り、ケーヒルはニヤリと笑った。「確か、インサイドのボールで三振をとったかな」。約150キロの高速シンカーの投げ方は、いたってシンプルだった。「縫い目にそって握る。僕の直球(フォーシーム)は元々シュート気味。だからツーシームのように握って投げると、沈むんだ。自然な投げ方だよ」。スリークオーターで手首の角度は斜めだが、ひねらずそのまま投げる。自分の腕の振りと球筋を理解し、利用したことで、高速シンカーが生まれた。
打席での大谷の反応から、大きな変化量は明白だった。昨年8月12日のアスレチックス戦。初対戦で3打数無安打2三振を喫した。珍しかったのはシンカーに対する見逃し方。第1打席と第3打席、懐をえぐられて腰を引いたが、内角のボールゾーンから大きく変化し、ストライクとなった。カウントを稼がれ、「かなり自信がある」(ケーヒル)という低めのチェンジアップに空振り。修正能力の高い大谷でも、同じパターンで三振を繰り返した。
マイナー時代、捕手から「ツーシームがすごく動くから、これを投げ続けたらいい」と言われ、メジャーデビューまでの3年間、練習を続けた。今では内外角の両サイド、低めに投げ分け、自由自在だ。「変化が大きいから、周りからシンカーと呼ばれるようになった」と、いつの間にか名前も高速シンカーに“変化”。シンカーの使い手という代名詞を授かった。デビュー2年目の10年には18勝。競争の激しいメジャーで生き残るきっかけになった。
もっとも、大谷については「ボールを捉えるのもうまいし、それでいてパワーがある。修正も早い」と能力の高さを認める。相手としては完勝したが、今季からチームメートとなる。「打者で戻ってくるのが楽しみ。僕を助けてくれると思う」と期待を寄せた。
多くの投手から、投げ方を尋ねられるがケーヒルは「教えるのは難しい」と言う。なぜなら「僕の自然な投げ方だから」。上半身投げに近く、決して理想的な投げ方のようには見えない。だが、「一番大事なことは自分の投げ方を理解すること」。オリジナルを大事にして、生かす。それが、魔球誕生の由縁だった。
◆トレバー・ケーヒル◆ 1988年3月1日、米国生まれ。06年6月にドラフト2位でアスレチックスに入団。09年4月にメジャーデビュー。2年目に18勝するなど、デビューから4年連続2ケタ勝利を挙げた。今オフ、エンゼルスへ移籍。メジャー通算80勝83敗、防御率4・08。193センチ、104キロ。右投げ右打ち。
<大谷とケーヒルの対戦詳細>
8月12日(3番指名打者)
【第1打席】空振り三振
1球目 シンカー 真ん中 見逃しストライク
2球目 ナックルカーブ 低め ボール
3球目 シンカー 内角 見逃しストライク
4球目 チェンジアップ 内角低め 空振り
【第2打席】ニゴロ
1球目 シンカー 外角 ボール
2球目 チェンジアップ 内角 ファウル
3球目 カットボール ニゴロ
【第3打席】空振り三振
1球目 シンカー 内角 見逃しストライク
2球目 チェンジアップ 内角低め空振り
3球目 カーブ 内角低め ボール
4球目 カーブ 内角低め ボール
5球目 カットボール 内角低め ボール
6球目 シンカー 外角 ファウル
7球目 チェンジアップ 内角低め 空振り
9月29日(4番指名打者)
【第2打席】
1球目 チェンジアップ 内角 ファウル
2球目 カットボール 内角 見逃し
3球目 シンカー 外角 左直