イチロー劇場の幕開けだ!

マリナーズのイチロー外野手(45)が16日、7年ぶり日本開催の開幕戦となる20、21日のアスレチックス戦(東京ドーム)に向けて会見で独演会を展開。ブランク明けのオープン戦での不振を自虐的に認めつつ、過去の経験上、開幕前の成績が直結しないと自信ものぞかせた。同席したサービス監督、菊池のコメントに鋭いツッコミも入れ、イチロー節全開。平成を象徴するスーパースターがエンジンをふかした。

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イチローが、ひょっこりはんのように舞台袖から会見場をのぞいた。英雄のおちゃめな登場に“開演”を告げる笑いが起きる。

サービス監督がイチロー、菊池の順調な調整ぶりを説明すると「僕については監督はウソをついている」と否定。菊池が助言を受けたと発言すると「聞かれたから答えただけ。僕からアドバイスしたことは1度もない」と訂正した。時差ぼけ対策を聞かれ「時差にはいまだに慣れず、記者からの質問にも慣れず、アメリカ人のいいかげんにも慣れていない」と“慣れずの3段活用”を展開。四方八方、ツッコミまくった。

置かれた立場に、もちろん敏感だった。昨年5月に会長付特別補佐に就任。春季キャンプは招待選手で参加し、実戦は約9カ月ぶりだった。打撃を調整したが打率8分、18打席連続無安打中で日本に降り立った。

イチロー 当たり前のように結果を出して当たり前のようにここにいる状態をつくりたかった。実際はならず、大変苦しんだ。キャンプの結果を踏まえ、ここにいることはありえないこと。日本人でいることで、すでに勝ち組なんだなと。

日本開催の開幕戦だからイチローがいる-。周囲からの見方を自虐的な「勝ち組」という言葉に集約させて受け止めた。だがプライドも示した。04年にシーズン最多安打の262本を放ち、05年オープン戦は打率4割3分8厘もシーズンでは苦しんだこと。一転して08年は開幕前に26打席無安打も経験したが、同年も200安打を達成した事例を自ら挙げた。「そういった経験を生かし、この春にはいろんなことが起こる。大好きな日本でプレーすることで気持ちも変わるし、自分の持てる技術を見せたい」と反骨心も示した。

米メディアからは「どうやったら引退する時と分かるのか?」と直球な質問も飛んだ。「いつ分かるんですかね。それは僕にも分からない。こういう質問に慣れていないと思いました」と切り返し「(ヤンキースへのトレード後は)毎日その日を懸命に生きてきた。メジャーは当然、厳しい世界。いつチームから(戦力外の)通達が来るか分からない。そういう日々を過ごしてきた。そして今日もここにいるという状態です」と思いを重ねた。

会見後の練習ではフリー打撃で28スイングで5連発を含む10本の柵越え。かねて50歳までのプレーを公言する。だが、いばらの道も自覚する。「僕にとっては大きなギフト。1週間後は振り返ることになる。だから一瞬一瞬を刻み込みたい」。日本でのプレーは見納めかもしれない。一挙手一投足が永遠のイチローになる。【広重竜太郎】