「クレージーだ」。3月のアリゾナ州テンピでのスプリングキャンプ。エンゼルス大谷に寄り添っていた警備員のネイサンさん(22)は苦笑いでつぶやいた。サインを求め、メイン球場とサブグラウンドの間に出来た約200人の長蛇の列。周辺をじっと見つめ、冷静にさばいた。「押したり触ったり、腕を引っ張ったりしないように。そこを一番気をつけた」。ファンの気持ちもくみながら、リハビリ中の大谷を守った。

二刀流復活を目指す注目の男を守る大役。キャンプ最終日、ネイサンさんは「人生の中でも最高の時間だった。すごく価値ある経験になった」とうれしそうに笑った。大谷から「Thank You」と感謝されると、「Good Luck」と短い一言に復帰を心待ちにする思いを込めた。

同名犬も復帰を待つ。アナハイム近郊に住むリサさんの愛犬オータニ君。高齢者セラピーと災害時対応の訓練を受ける“二刀流犬”。生後2カ月だった昨年4月、他の名前には無反応も「オータニ」と呼ぶと振り向いたことで名付けられた。まだ大谷との対面は実現していない。リサさんはオータニ君の思いを代弁? するように言った。「二刀流でプレーできるまで長い道で、マラソンみたいだと思うけど楽しんで。いつかオータニも大谷に会いたいと思っているわ」。【斎藤庸裕】