レイズ筒香嘉智外野手(28)が24日(日本時間25日)、ブルージェイズとのメジャーデビュー戦で豪快なアーチを放った。

約4カ月遅れとなった開幕戦に「3番三塁」でスタメン出場。第3打席に、昨季ナ・リーグ最優秀防御率の左腕柳賢振投手(33)から左中間へ完璧な2ランをたたき込んだ。メジャーデビュー戦で本塁打を放った日本人は5人目の快挙だ。レッズ秋山、エンゼルス大谷も安打発進。60試合の短距離走で、日本人メジャーの野手3人が好ダッシュに成功した。

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夢に描いたはずのメジャー初アーチにも、筒香はどう反応していいものか、少し戸惑っていた。5点ビハインドの5回2死一塁。昨季ナ・リーグ最優秀防御率の難敵、左腕柳賢振の143キロ速球を、完璧なスイングで左中間へ運んだ。試合は劣勢で、観客席は無人。「ファンの方がいない中、いつもと違うような初めて経験するような感じでした」。地元の歓声があれば、ヘルメットを掲げていたかもしれない。同点、逆転、サヨナラ弾であれば、ガッツポーズも出たかもしれない。筒香の記念弾は、豪快かつ静かに左翼席ではずんだ。

相手が屈指の左腕でも、メジャーではチームの軸と言われる「3番」で起用された首脳陣の信頼感は、身に染みていた。左腕対策としてDeNA時代には試みていなかったオープン気味のスタンスにアレンジ。「この舞台で本塁打を打てたことはうれしいですけど、チームが負けてしまったので悔しいです」。個人のデビュー弾とチームの黒星に明確な一線を引く姿勢は、DeNA時代と変わっていない。

言語も文化も異なる米球界に、覚悟を持って身を投じた。2月24日のオープン戦(レッドソックス戦)で初アーチをかけても、ニコリとも笑わなかった。「いい結果の方がいいに決まってますけども、あくまでもシーズンです」。結果の重みを認識しているからこそ、準備過程に浮かれることはなかった。

3月中旬、キャンプが中止となった後、一時帰国を決断した。開幕日が決まらなかった一方、地元関西地区で自主トレを継続。バッティングセンターでは、打撃マシンを時速170キロに設定して打ち込みを続けた。数字上だけでなく、感覚的に10キロ以上速く感じ、さらに重く感じるメジャー投手に対抗するため、目を慣らし続け、感覚を研ぎ続けるためだった。

開幕戦を落としたとはいえ、キャッシュ監督は筒香の存在感を絶賛した。「打った瞬間、(本塁打は)疑いようがなかった。彼はスペシャルな選手だ」。どのチームにも日替わりのヒーローは存在する。だが、「スペシャルな選手」は、そう多くはない。

▼筒香が初本塁打。大リーグデビュー戦で本塁打を放ったのは、04年松井稼(メッツ=初打席)06年城島(マリナーズ=2打席目)08年福留(カブス=4打席目)16年前田(ドジャース投手=2打席目)に次いで5人目(野手4人目)。

▼筒香は3番で起用。開幕戦でクリーンアップトリオに座った日本選手は03年松井秀(ヤンキース5番)08年福留(カブス5番)に次いで3人目。3番は初。