ドジャースのデーブ・ロバーツ監督(48)が、球団関係者全員に米国内で激増するアジア人に対する憎悪犯罪を憂慮する異例の訴えをしたことが明らかになった。

昨季、ドジャースを32年ぶりとなる世界一に導いた同監督は、日本人の母とアフリカ系米国人の父を持ち、沖縄で生まれた。本拠地のあるロサンゼルスでもアジア系を標的にした憎悪犯罪が増えていることを受け、「この数カ月でアジア系米国人への憎悪犯罪は激増しており、カリフォルニアとニューヨークでは高齢者が標的になっている。このようなイジメは卑劣だ」と全関係者にメールを送ったと、ESPNが報じた。

トランプ前大統領が「中国ウイルス」と新型コロナを呼んだことがアジア人への差別を助長していると言われることにも触れ、「新型コロナウイルス感染拡大をアジア人のせいにするのは間違っている。人種差別行為をしてはならない」と非難しているという。

2015年11月にドジャースの監督に就任したロバーツ監督は、マリナーズの元監督ドン・ワカマツ氏に次ぐMLB監督では2人目のアジア系で、ドジャースではこれまで黒田博樹氏やパドレス・ダルビッシュ有投手、ツインズ前田健太投手ら多くの日本人選手もプレーしている。ロバーツ監督は、「ドジャースは日本の野茂英雄、韓国の朴賛浩など他のどのチームより多くのアジア人選手を迎えてきた。私はアジア地域社会と住民を包容する人たちと共に立つ」とアジア出身の選手たちが活躍した歴史を引き合いに、差別をやめるよう訴えている。

アジア系への差別は米スポーツ界でも問題視され始めており、MLBも「陰険なヘイトを根絶することは我々の共有の責任」などと声明を先月発表しているほか、北米プロアイスホッケーNHLも同様のスタンスを示している。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)