エンゼルス大谷翔平投手(26)がメジャー4年目で最高の開幕ダッシュを切った。ここまで全試合出場を続け、野手ではリーグ2位タイの7本塁打、投手では3試合に先発し3年ぶりの白星を挙げた。レッドソックスなどで活躍した元救援投手の上原浩治氏(46=日刊スポーツ評論家)も、「二刀流」を貫く姿勢に感嘆する。開幕1カ月のプレーを総括し、今後の起用法などを提言した。

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大谷の今季活躍に、ビックリしない人はいないのではないだろうか。3年前に右肘のトミー・ジョン手術を行い、昨年は不振。特に投手としては深刻で、野手での出場が大半だった。投球か打撃-。それまでは一方が不振でも、それなりに修正してきた。しかし両方が不振となれば、やはり難しい。率直に「二刀流」の限界を感じたのは、私だけではなかったと思う。

それだけに今季の大谷には注目していた。そしてド肝を抜かれた。投手能力はまだ完全ではないが、150キロ台後半のストレートと落差のあるスプリットの威力は上がっている。思い切って投げると制球を乱すが、先発としてローテーションに入るだけの実力は証明できるレベルだ。打撃は完璧。どのくらい出場可能かは未知数だが、フル出場に近い打席数をこなせれば、本塁打のタイトルを狙えるほどのレベルにある。

どんなオフを過ごしたのだろう。体は一回り大きくなっているし、何よりも投球と打撃の両フォームの修正に、どれぐらい時間をかけたのか想像できない。投打とも、時間をかければ必ずしも修正できるものでもない。

そもそも投手が使う筋肉と、野手が使う筋肉は違う。右投げ左打ちの大谷は、なおさらだろう。使う筋肉が違えば酷使しすぎないという点ではメリットがあるが、鍛えるという点を考えると倍の労力が必要。技術力のアップには反復練習が必要だし、それだけでも投球と打撃の2つに練習時間を割かなければいけない。両技術を、世界最高峰のメジャーで通用するように仕立てるのが「二刀流」。昨年は限界を感じたが、今年は再び「できるのではないか」という期待が高まっている。

今季の先発初登板は2番で本塁打をマーク。2度目の先発はマウンドに専念したが、翌日は指名打者で出場している。そして先発3試合目の27日レンジャーズ戦は再び「2番投手」で臨み、3年ぶりの勝利を挙げた。昨年まで先発の前日と翌日は休養に充てることが多かったが、本物の「二刀流」を実践している。

このペースでどこまで続けられるのだろうか? 私は先発して100球以上投げた翌日に、野手として出場しろと言われても絶対に無理。もちろん、野手として出場しろと言われるようなレベルではないが(笑い)。肩、肘はもちろん、体のあちこちが張っている状態を思い返しても、信じられない。

そんな事情を私なりに考慮すると、ストッパーに転向すれば「二刀流」を持続できる可能性は広がると思う。1イニングだけなら体は張らない。大谷がブルペンで何球ぐらい投げれば準備できるかは分からないが、メジャーのリリーバーは10球前後で肩を作る選手が多い。まったく投げていないのに1球目から全力で投げる選手もいる。私も10球ぐらいでできたので、日本にいた頃は驚かれた。大谷は空振りを奪えるスプリットがある。多少の制球力がなくても、ストライクゾーンに投げてファウルにする真っすぐの球威がある。球数を少なくして肩を作ることができるなら、先発よりストッパーの適性はある。

ただ、日本にいた頃から現在まで、こちらの想像を超える能力で「二刀流」を続けてきた。何よりも、マドン監督は「二刀流」に理解があり、協力してくれている。前人未到のプレーでどこまで突き進むのか。興味と期待は尽きない。(日刊スポーツ評論家)