レッドソックス沢村拓一投手(33)が、日刊スポーツ独占コラム「ありのまま」の第2回を寄稿した。テーマは「マインド」。14試合に登板し、1勝0敗、防御率3・31。投球回数を上回る21奪三振をマークする剛腕が「マインド」の意義を記した。

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昨年1年間の経験を通して「マインド」って大事だなと思った。自分自身への厳しさの中にも許す部分だったり、心に余裕が持てる。そういう精神状態に持っていければいいなって。

振り返れば、家族だったり、友人だったり、自分の周りにいる人たちが僕に声をかけてくれた。支えてくれて、そして、まだやれるって信じてくれた。これが一番大きかったかな。

マインドを毎日フラットにした状態で毎日プレーできてることが、今一番大きい。もちろん、毎回完璧に投げられるわけではないし、ミスもする。それも全部自分の中で受け入れて、許してあげて、毎日戦う。このことの繰り返しでしかない。

チームや会社を組織とするならば、組織を動かす上で“動かす人”と“動かされる人”に分けられる。選手である自分は“動かされる側”なんだけど、“動かす側”の人からの声の掛けられ方で全然違う。

野球だけに限らず、日常生活でも何でもそう。あくまでも例えの話だけど、家族でも友人でも恋人でも何だって、「○○してくれる?」って聞くのと、「○○しといてくれ」って言うのでは、してもらう事実は変わらなくても、受け取り手は動きたくなくなっちゃうもんね(笑い)。

おごらず、たかぶらず、謙虚であることは常に肝に銘じてる。でも、謙虚ではあるけど、謙遜はしない。「これしかできない」ってことは言わない。「これができる」って言う。同じように聞こえるけど、これも全然違う。後者の方が前向きに聞こえるでしょ?(笑い)。グラウンドを離れたら、誰に対しても優しく等しく、自分の固定観念を押し付けることもしない。

やっぱりね、プロなんだから自信を持っていこうよって思う。簡単なことじゃないよ。「プロの選手なんだから、結果が当たり前」って言うけど、それも正解。でも、プロになるまでに周りが遊んでる時間に頑張ってきて、プロにいることも事実。プロ野球の1軍のベンチ入りメンバーで言えば、26人×12球団で312人なわけでしょ。日本の人口から考えて、どんな倍率よ(笑い)。

かと言って、オレが自信を持って、マウンドに立ててるかって言ったらそうじゃない。めちゃくちゃマイナスなことが頭をよぎったり、ストライクゾーンにいくことが怖かったり、自分も自信を持てない時があったし、そりゃ今でも怖い時もある。自分自身の弱さだったり、怖さだったり、それを認めるってのも強さだと思う。

認めた上でその問題をどうするか。問題をイジイジ気にしてるよりも、解決策を気にしないとね。客観的に今の自分を見て、何が必要で何が足りないのか。その上で、またチャレンジしていく。

7日(日本時間8日)のオリオールズ戦で自己最速の99マイルの速球を右中間に運ばれた。ホームランを打たれたことよりも、3ボール2ストライクのカウントで四球がよぎった。「出したくないな~嫌だな~」って投げたらホームランよ。打たれたことじゃなく、投げる前に何を後ろ向きになってんだって、そこを“反省”。ただ、打たれた後、後続を3人で断ったことは“成長”かな。

反省すべきところだけにフォーカスするのではなくて、「成長できたなって感じられるところをどんどん伸ばしていこう」って気持ちも大切。心が揺れ動いた2020年の1年間の経験がものすごく大きいし、今に生きている。(レッドソックス投手)