エンゼルス大谷翔平投手(27)が「1番DH」でスタメン出場。打者としては2打数無安打に終わったものの、投手として1回無安打無失点と好投し、日本人としては19年の田中将大(ヤンキース、現楽天)以来、2人目の勝利投手となった。

打者としてバットから快音は聞こえなかったものの、投手としても強打者から快音を封じた。1回、1番タティスを左飛、2番マンシーを二ゴロ。3番アレナドには最速100・2マイル(約161・3キロ)を計測し(結果はファウル)、最後は遊ゴロに仕留めた。「普段はそんなに初回から三振ばかり狙うということはないんですけど、今日はもう全部取りに行くつもりでいったので…。まあ、結果、取れなかったですけど(笑い)。いいところに投げてもしっかりコンタクトする率も高いですし、さすがだなと思う打者が多いなと思います」。14球で役目を終えると、超満員の観衆から大声援で出迎えを受けた。

前夜のホームランダービーからの疲労が残っていたのか、打席では二ゴロと一ゴロ。それでも、それぞれの光景が、大谷の目には強烈に焼き付いていた。「球場入りから、試合から…、ホームランダービーもそうですし、こういう雰囲気というのはなかなかシーズン中もないと思うので。本当に野球が好きな人たちがこれだけ集まってくれて。すごくいい雰囲気だったなと思います」。

しかも、DHを解除せず、投手として交代後も打席に入る「特例」が認められるなど、周囲からの期待の高さも強く再認識した。「やっぱりありがたいですね。ルール自体を変えてもらって、今日も2打席立たせてもらって、そういう柔軟性だったり、なかなか伝統あるこういう場所では難しいと思うんですけど、そういうふうにしてもらって、すごく感謝しています」。

球界の常識を変え、史上初めて「二刀流」として臨んだ夢舞台。ホームランダービーで150メートルを超えるアーチをかけ、マウンドからは160キロ以上の速球を投げ込み、あらためてその潜在能力を実証した。メジャーでも本物のスーパースターの仲間入りを果たした大谷を、全米中にお披露目するための2日間のようだった。【四竈衛】

◆勝ち投手の決定 大谷は先発1回だけで降板も勝利投手になった。野球規則9・17(e)に「オールスターゲームのような場合は、勝利チームが試合の最後までリードを保った時、そのリードを奪った当時投球していた投手(先発または救援)に与える」(要約)とある。

◆日本では 大谷は日本の球宴に通算9試合出場し、打撃は15打数5安打(1本塁打)、投手は3度登板で1勝0敗。勝利は14年第2戦(甲子園)で挙げ、投手専念で先発して1回1失点だった。球宴の日米勝利は田中将大(日本=11年1勝、米国=19年1勝)に次いで2人目。