パドレスのダルビッシュ有投手(35)が8日(日本時間9日)、自身ワーストの7連敗を止め、プレーオフ争いの正念場に間に合った。エンゼルス戦に先発し、6回3安打1失点7奪三振と好投。6月21日以来、11試合ぶりとなる8勝目(9敗)を挙げた。日本ハムで同じ背番号「11」を背負ったエ軍大谷翔平投手(27)との初対決は実現しなかったものの、不振期を乗り越え、ようやく本来の姿を取り戻してきた。

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約2カ月半、白星から見放されてきたダルビッシュは、図らずも敵将の言葉に復活へのヒントを見いだしていた。登板前日7日の試合前、カブス時代の監督でもあるエ軍マドン監督の下へあいさつに出向いた。16年世界一の名将は、ダルビッシュの特性を見抜いていた。「『あなたはフィーリングの人だから、フィーリングの通りに投げればいい』と言われました。今日は(自分の)頭が投げたいように投げさせたという感覚でした」。

通常であれば、過去のデータ、相手打者の傾向などをインプットし、捕手と入念な打ち合わせをした後、マウンドへ向かう。だが、この日は先入観を消した。試合前、ブルペンでの投球練習中には、フリッツ投手コーチに「今日は何も考えずに投げる、自分の感覚だけ」と伝えた。「最後のリリースポイントですごくいい感覚を覚えているんです。そのリリースポイントを表現できる準備ができるまで、とにかく自分の頭、奥底にある感性というか、とにかくそこに任せる。最後のリリースのタイミングが来たら初めて自分で投げるという感覚です」。開き直りではなく、投手本来の闘争心に立ち返った。

効果はてきめんだった。初回は、すべて96マイル(約155キロ)の速球系で3者連続見逃し三振。2回に大量8点の援護もあり、4回の1失点だけに封じ、79日ぶりの勝利を手にした。

中盤までに大差がついたこともあり、大谷との初対決は実現しなかった。「久しぶりに会ってうれしかったですし、(対戦が)なかったのですごく残念です。(代打で)100%来ると思ってましたし、頭の中でイメージできていたんですけど…。何だったんだろうという感じ」と拍子抜けした様子だった。

データを度外視し、ダルビッシュ本来の感覚だけで大谷と対決していれば…。久しぶりの白星を味わう一方、ダルビッシュの残念そうな表情が印象的だった。