【アナハイム(米カリフォルニア州)9日(日本時間10日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(27)が、今季2度目の1試合2発で節目のメジャー通算100本塁打に王手をかけた。まず6回に左中間席へ本拠地では今シーズン初アーチとなる5号ソロ。トラウトとの今季初めてのアベック弾を2者連続アーチで飾った。そして7回に、メジャー99本目となる6号をキャリア初の満塁弾で決めた。4打数3安打5打点の活躍でチームは2連勝。貯金を今季最多の9とした。

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バットをゆっくりと離し、大谷は歩き出した。手応え十分、本塁打を確信していた。久々に貫禄の漂うフィニッシュ。7回無死満塁、右腕フォーチャーのカットボールを捉えた打球は角度29度の美しい放物線を描き、左翼フェンスを越えた。8点差に広げるダメ押しの1発。「終盤、離せるかどうかで(味方の)中継ぎの枚数も変わってきますし、そういう意味ではすごい、いいホームランだった」。プロ10年目で日米通じて初のグランドスラムには「僕の中では打っていたと思っていたので、知らなかったです」と笑った。

メジャー通算100号に王手をかけた満塁弾は、自力と他力のたまものだった。開幕から右方向に引っ張る傾向が強く、成績も上向かなかった中で「甘い球は基本的にセンター方向に打てればいい」と原点回帰。この日も好球必打と中堅から左方向への打撃を意識した。さらに「一番は構え。どういうイメージで打席に立っているかが一番大事」と、これまでぶれることなく基本としてきた打撃スタイルを顧み、徐々に改善を重ねた。「いい内容を継続して辛抱強くいければ、いい成績が残る」。結果に一喜一憂せず、自分を信じ続けた。

その過程で周囲の助けも借りた。6回に放った1発目はトラウトとの2者連続アーチ。「前がトラウト選手だったので、それに引き続きというか、そういう形で甘い球を打とうと思った」と、勢いに乗った。7回無死満塁の場面では、後ろに前日サヨナラ打を放ったレンドンが控えていた。相手にとっては大谷と勝負せざるを得ない状況。結果、カウント3-1とボール先行から内角寄りに入ってきた甘いストライク球をきっちり仕留めた。

もっとも、その状況を生み出したのはマドン監督でもある。大谷は「チーム状態がいいので、その中で打てない選手がいると打順をもっと落としたくなるところだと思うんですけど、そこを我慢して使ってもらって、すごい感謝してます。早くその期待に応えられるように、継続できるように頑張りたい」と意欲を見せた。日本人最速のメジャー通算100号まであと1本。「早く達成したいなというか、できれば明日打って、早めに越えたい」と宣言した。確実な手応えを感じた2発。一気に達成する予感はある。

○…本塁打後にかぶせられる白のカウボーイハットにも、変化が表れ始めた。エンゼルスの球団マークのシールが貼られ、本塁打を放つ度に数が増えていくという。今季から新たな儀式となったパフォーマンスも板についてきた大谷は「もちろん気分はいいですし、よりみんなが多くかぶれば、それだけ多く勝てるので、いい打撃内容の中でつないでいきたいなと思います」と話した。

○…この日は大谷ら選手が左胸に緑のリボンを付けてプレーした。「メンタルヘルス・アウェアネス」と呼ばれる活動の一環で、心の健康やメンタルケアの重要性について、社会の認知を高めるためだという。前日は母の日で、左胸にピンク色のリボンがついたユニホームを着用した。

○…主砲トラウトがチームの2連勝に貢献した。6回無死一塁から左越えに豪快な7号2ラン。本拠地エンゼルスタジアムでの通算161号はティム・サーモンを抜き、球団新記録となった。「特別なこと。サーモンを超えるというのはいつでも、大きなことだね」と話した。ちなみに、英語のトラウトは日本語で魚のマスを意味し、サーモンはサケ。魚で言えば、マスがサケの記録を抜いた。