【アナハイム(米カリフォルニア州)21日(日本時間22日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(28)が「3番DH兼投手」で出場し、5カードぶりの勝ち越しに貢献した。投手では6回99球で2安打1失点。6勝目はならなかったが、データ解析だけでは正確に判別できない変化と工夫を加えた。打者では3打数1安打。チームは7回に2点勝ち越し、最後は守護神エステベスが締めた。ア・リーグ中地区首位のツインズを相手に2勝1敗。貯金を2とした。

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時に、超人のスーパーマンやユニコーンと表現されることもある。とはいえ、大谷はヒューマンだ。登板前の直近4試合連続で合計8本塁打を浴び、防御率は6・12と打ち込まれた。この日は、本塁打を防いで1失点に抑えたが、四死球が4つ。1回と2回、先頭打者に2度、四球を与えた。

「いろいろ異論はあると思いますけど、一番は(体の)動き的な問題かなと。速い球を投げる投手はコマンド(制球)もブレがちですし、逆に言えば両立できる投手がいい投手。探していくというか、どっちも伸ばしていく、そういう動きができれば。まだまだ発展途上だなと思うので、全球種を伸ばしていける」

開幕から課題だった制球を改善し、相反して最近は被本塁打が増加。10戦目のこの日は再び四球が多いパターンとなった。5勝1敗と勝ちが先行する一方で、課題を克服し、頭を使い、工夫をこらす作業が続く。

2回2死一塁、カストロへの2球目。ワンバウンドの約128キロスイーパーで空振りを奪った。明確な定義こそないが、横に鋭角に曲がるとされるスイーパーが、この日の全球種で最大の縦変化50インチ(約127センチ)を記録。6回1死、左打者キリロフへの4球目、約132キロのカットボールは縦変化44インチ(約112センチ)。ともに腕を振り下ろすような投球フォームで、肘を下げて横の変化を加える投げ方とは明らかに違った。

「トラックマン次第かなというか、動きを変えながら投げていたりするので。カットボールの表記になっていても、違う球種の場合もありますし、スプリット表記でもシンカーの時があるし、シンカーの時でもスプリットの時もある」

スイーパーやカットボールは“データ上の表示”というだけで、大谷の認識では違う球種を投げている可能性がある。球場の追跡システムでは判別ができない球種があれば当然、打者は絞りづらくなる。分析アナリストを擁し、戦略を立てる相手を上回るのは、臨機応変に工夫ができる人間だ。この日の大谷は、空振り数が22で前回の10から倍増。「無視できない球種を1つ確実に印象付けることが大事」。勝敗はつかなかったが、手応えはある。さらなる進化の過程にいる。

 

○…大谷は先制点を奪われながら、最少失点で粘った。3回2死から四球を与え、2番コレアに甘く入ったスイーパーを右中間へ運ばれた。「ボールゾーンでいいかなと思って投げましたけど、ゾーンに入っている分、しっかりコンタクトされた。賢い打者だと思うので、打席の中でもいろいろ変えてきてますし、そこに対応しきれなかった」。制球ミスに唇をかんだ。

四死球4つと課題は残ったが、カーブ以外の全球種を有効に使い、9奪三振の力投。流れを引き寄せた。打者では1回に中前打。チームは7回にモニアクの2点適時打で勝ち越し、守護神エステベスで締めた。

大谷の今季登板試合は8勝2敗としっかり貯金を稼いでいる。上位で踏ん張っているチーム状況に、「ノーチャンスで負ける試合が少ない。最後まで接戦で諦めない姿勢が出ているのは、いい雰囲気だからじゃないかなと思うので。昨日も、負けましたけど勝てるチャンスは十分にあったと思うので。そういう試合を拾えれば、もっともっと勝ち星がついてくる」と前向きに話した。

○…エンゼルスは21日、救援投手を一気に6人入れ替えた。レイエス・モロンタ(30)、ジェイコブ・ウェブ(29)を3Aから今季初昇格させ、左腕アーロン・ループ(35)を15日間の負傷者リストから復帰させた。アンドルー・ワンツ(27)、ザック・ワイス(30)、ジミー・ハーゲット(29)が3Aに降格した。モロンタは早速ツインズ戦で登板し、大谷の後を受けて2/3回を2安打1四球で無失点だった。