エンゼルス大谷翔平投手(29)は、2年ぶり2度目のMVP受賞が確実されています。今季は打者で打率3割4厘、44本塁打、95打点で初の本塁打王に輝き、投手では10勝5敗、防御率3・14。史上初となる2年連続の「2桁本塁打&2桁勝利」を達成しました。二刀流の活躍を続ける大谷を、他球団のライバルたちはどう見ているのか。11月16日(日本時間17日)のMVP発表まで、随時連載します。

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23年シーズン序盤、ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(31)は、大谷翔平投手(29)との対決を楽しんでいた。メジャーリーグを代表するスター同士の対決は「ホームラン・バトル」と称され、対戦カードの度に注目された。ジャッジにとって大谷は、ライバル心を燃やすような存在なのかと思えば、そうではなかった。

「友達だよ。僕は彼の大ファンだし、打席だけじゃなくマウンドで戦う姿を見るのが大好きだ。ライバルというよりは、フレンドリーな競争だね。選手は最高の相手と戦いたいと思うもの。それに尽きる」

4月19日、中堅フェンスを越えそうだった大谷の打球をジャンピングで好捕した試合後に、こう語った。97%の確率で本塁打となるはずだった大飛球。身長201センチの長身だからこそ可能なホームランキャッチだった。それも、2年連続でやってのけた。

前年のMVP争いでは、リーグ記録を更新する62本塁打を放ったジャッジが栄冠を勝ち取った。だが今季は、大谷が前半戦までに本塁打を量産。わずか1年でリーグ記録を塗り替えるのではと周囲がざわめく中、ジャッジは「素晴らしいことで、見ていて楽しい。記録は破られるためにある」と笑顔だった。

打者大谷とジャッジには、打撃フォームで大きな違いがある。前足を上げずにつま先とかかとの動きだけでタイミングを取る大谷に対し、ジャッジは足を上げる。今年7月、「僕も少しやってみたけど、まだ習得できていない。あと2~3年かかると思う」と大谷の下半身の使い方をたたえた上で、「フィジカル(肉体面)で言えば、(シーズンで)80本、100本でも打てるよ。それぐらいの才能がある」と語った。

ジャッジから見た大谷の優れた技術は、打球方向や打席での粘り強さ、スピードにもある。「ライト方向に500フィート(約152メートル)の打球を飛ばせるだけでなく、彼はインサイドのボールをセンターからレフトに打ち返せる」。さらに、「得点圏に走者がいる状況で、たとえ2ストライクと追い込まれても、しっかり打つことができるし、あの体の大きさで、三塁打でもトップを争っているのはとても印象的」と称賛した。

一方で、投手大谷とは過去の対戦で2打数2安打1本塁打と完勝している。右肘の再手術により、再戦は25年シーズン以降となるが、今年8月下旬に大谷が故障する約1カ月前、ジャッジは二刀流にリスペクトを示していた。「長い間、見られなかったようなこと。もしかしたら、彼がやっていることは、もう見られないかもしれない。驚くべき、世代を代表する才能の持ち主。彼を見て、戦えるチャンスがあることにとても感謝している」。前年のMVPスラッガーは、大谷の完全復活を待ち望んでいるに違いない。【MLB担当=斎藤庸裕】

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