エンゼルスからFAとなっている大谷が2度目のア・リーグMVPに輝き、出身地の岩手県奥州市は大いに沸いた。生まれ故郷の水沢姉体町(あねたいちょう)では花火を打ち上げて、快挙を祝福した。幼少期を知る町民たちは二刀流の活躍が元気の源。大谷の応援を続ける地元の人々の思いを、「大谷と故郷の絆」と題して3回連載でお届けします。

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史上初、2度目の満票MVPに輝いた大谷翔平投手(29)は、故郷の岩手・奥州市にも希望の光を照らしている。母校・姉体小学校の松本圭校長は、大谷の出身校ということで「子どもたちも、うれしそうにしています。野球だけじゃなくて、人の手本になるような行動がすごいって言ってますね」と明かす。校内には大谷の打撃フォームをかたどった工作があり、学校の壁には「頑張れ!大谷先輩 僕らの希望」と、横断幕も掲げられている。

小中高とともにプレーした幼なじみで、現在は社会人野球「日本製鉄室蘭シャークス」に所属する佐々木大樹さんの父・佐々木健一さんは、家族ぐるみで仲良しだった。「(大谷は)やんちゃで元気のいい子でした。小学校の頃から知っているからイメージが湧かないですけど、まさかこんなにビッグになるとは」と目を丸くするが、成長を見守る中で、印象的な出来事があった。「日本のプロ野球か、メジャー挑戦かで迷っていた頃、日本ハム入団を決めたあとに、わざわざ私の勤める会社の会合にあいさつしに、足を運んでくれたんです。律義ですよね」とうれしそうに明かした。

故郷の人々は、世界レベルで戦う大谷の応援を続ける。その一方で、奥州市も世界と戦っている。「国際リニアコライダー(ILC)」と呼ばれる、ビッグバンを再現できるという直線加速器の研究施設を東北に誘致するため、政府や国際機関と話し合いを継続中。実現すれば世界中から研究者が集まり、多文化が共生する国際都市として世界を代表する「知の拠点」になるという。野球と直接的な関連はないが、世界を舞台に羽ばたく意味では、その姿が重なる。大谷は悲願のプレーオフ進出とワールドシリーズ制覇へ、故郷とともに、次なるゴールへ向かう。【斎藤庸裕】(終わり)