ついつい情が入ってしまった。パドレスのダルビッシュ有投手が、韓国・ソウルでのドジャース戦で日本人最多タイとなる4度目の開幕投手を務めた。37歳7カ月は日本人最年長記録更新。メジャー実働12年目は野茂と並ぶ最多となった。白星はつかずも4回2死まで1失点。ドジャース大谷翔平との初対決は2打数1安打で、苦笑いで「なんだかんだ情が入ってたんだな」と振り返った。

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ダルビッシュがほえた。3回2死満塁、フルカウント。外角高めに151キロを投げ込み、マンシーから空振り三振を奪った。三塁方向へクルッと1回転し、右手を握り締めた。大谷の安打から始まり、連続四球で迎えたピンチを切り抜け、それまで抑えていた感情を一気に爆発させた。

日本ハムの背番号11を継承した大谷との初対決は、1回無死一塁だった。「今回は敵として戦うので、あまり私情は入れずに、1人の打者として対戦したい」と話していたが、1回無死一塁の初球は力が入った。「一緒にトレーニングしてた時期もあるし、今までの関係もあって、不思議な感じがした。でもピッチクロックがあるので投げないといけなくて、ゆっくり楽しむことはできなかった」。初球は内角高め、大谷がのけぞる154キロの直球。カウント2-1から、外角のスプリットを引っかけさせ、遊ゴロに仕留めた。

2度目の対戦は3回2死、内角高めを狙ったツーシームが外に抜けた。ライナーで右前に運ばれ「強い打球を打ってさすがだなと思った」。一塁へ大谷が行くと「ヒットを打たれた後に、自分の中でニコッとしてしまって、なんだかんだ情が入ってたんだなと思う」と振り返った。次打者の初球に盗塁を決められたが「1、3番はずっと対戦して変わらないが、大谷君が入ることによって走ることができる」とド軍のMVPトリオに警戒感を強めた。

プロ20年目らしく、カオスな状況には動じなかった。韓国特有の曲を流してマイクを使った応援が続く中、メジャー流のオルガンも鳴り響いた。「日本とは似てますけど、また違って。貴重な経験ですごく楽しかった」。最速154キロを出しながら、最も遅いカーブは112キロと最大42キロ差の緩急を生かした。4回途中まで1失点に「時差だったり、初めて来る国だったり、いろいろありましたが楽しめました。粘りながら、試合はつくれたかなと思います」。白星こそつかなかったが、ベテランらしく自らを客観視していた。【斎藤直樹】

【動画】ダルビッシュ、ドジャース・マンシーから空振り三振奪いほえる