MLBのドラフト会議が迫る中、ソフトバンクからも指名を受けているスタンフォード大・佐々木麟太郎内野手(21)の動向に注目が集まっている。
果たしてメジャーからも指名を受けるのか。そもそも米国のドラフトとは、どんなものなのか。日米両方のドラフトを経験した元ロッテ投手で、現在ゴールドジムを運営する企業「THINKフィットネス」に勤務する藤谷周平さん(38)に聞いた。
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藤谷さんは、日米の両方でドラフト指名を受けた数少ない経験者だ。MLBのドラフト前、各球団の勧誘合戦はすさまじいものだったという。
「スカウトからの接触はすごくあります。最初ゼロだったバックネット裏のスカウトが、3年のときには7~8人が当たり前。私の場合、3年終了時に野球部が廃部になり、その後に地元のMLBの練習施設に通ったのですが、その施設に球団の名前で手紙が届いた。スカウトの名前や連絡先が入っていて、連絡が欲しいとか、試合に見に行きますといった内容が書かれていた。手紙は最終的には27球団くらいから来ました」
米国では日本のようなプロ志望届のようなものはなく、条件を満たしたアマチュア選手すべてが指名対象。ただし専門誌などのメディアによる選手の格付けが盛んで、指名が予想される選手の有望株ランキング上位200~300人のリストが公開される。
「私はドラフトの年に、専門誌ベースボール・アメリカのトップ100に入りました。事前には知らず、友人から入っているよと言われて。100位以内だと、ドラフト3巡目くらいの評価です。実際の指名は、予想より全然低かった。想像ですが、野球部が廃部になり次が決まっていなかったので、下位指名でも契約すると思われたのでしょう」
それでもドラフト前には、入団交渉も活発に行われた。米国の場合、上位指名候補は代理人がついて交渉することが珍しくないが、藤谷さんはすべて自分で交渉したという。
「ドラフト会議近くになると、スカウトから毎日電話がかかってきました。『何巡目指名なら入団する?』といった、フランクなノリで聞かれたりしましたね。最後まで接触があったのは、十数球団だったと思います。MLB施設に通っていたので、そこの職員の方に、どういう条件なら契約した方がいいとか、様々なアドバイスをもらいました。具体的な交渉に入ると、スカウトとは別の担当者と話をするのですが、入団が決まる前にあらゆることが契約で決められます。マイナーのどのクラスからスタートするか、マイナーのどのクラスでは何試合出場するか、何年目にメジャー40人に何日間入れるかなど」
結局、18巡目で指名を受けたパドレスには入団せず、奨学金付きのオファーがあった南カリフォルニア大への編入を決めた。ノーザンアイオワ大からプロ入りするのは不利との判断だったという。
「本当に実力のある選手は別ですが、出身大学の格は入団後も大きく影響します。私の大学では、マイナーで1年やっただけで切られる可能性もあった」
一方、佐々木のスタンフォード大のような名門出身の場合は、入団後も有利。
「そこは非常に大きいです。でも彼は本当に力がある。個人としてもすごく魅力的な選手だと思いますし、注目度もすごくある。あそこまで力があり、その上スタンフォードだったらさらに強い。鬼に金棒みたいな感じでしょう」
名門大学ほど順調なプロ生活が送れる理由の1つは、厳しい学業と野球を両立してきたという点だ。大学生アスリートは、ある程度高い水準の成績を維持しなければ、練習参加や試合出場ができなくなる。
「スタンフォードは学業の方でも全米トップ級なので、野球と学業で恐らく寝る時間もないと思います。それを英語を覚える段階からやるのは、並みの精神力ではできない。授業の様子もチェックされ、教室の後ろに座っていると授業を聞いていないと判断されるので、大学アスリートはみんな教室の一番前に座る。厳しいですよ」
佐々木はどうなるのか。「絶対どこかから指名を受ける。楽しみにしています」と藤谷さんは期待した。【水次祥子】
◆藤谷周平(ふじや・しゅうへい) 1987年8月12日生まれ、東京都出身。7歳で米国に渡り、アーバイン高からノーザンアイオワ大に進学し、09年にパドレスからドラフト18巡目で指名。入団はせず野球名門校の南カリフォルニア大に編入。10年のドラフト会議でロッテに6位指名され入団し、1軍での出場がないまま14年で退団。現在はゴールドジムを運営する株式会社THINKフィットネスで、世界で人気沸騰中の競技「HYROX(ハイロックス)」の普及に努めている。現役時代は190センチ、77キロ。右投げ右打ち。
◆MLBドラフト会議とは 今年は7月11、12日(日本時間12、13日)にフィラデルフィアで開催。全30球団が参加し、2日間で20巡目まで指名が行われる。今年の全体1位指名権を持つのはホワイトソックス。2位レイズ、3位ツインズと続き、ワールドシリーズ2連覇を果たし総年俸で限度額を超えたドジャースは、ペナルティーが科せられたため1巡目の指名権はなく、2巡目の3番目、全体40位が最初の指名となる。指名対象選手は高卒、短大1年終了、4年制大学の3年終了、または21歳を超えた米国、カナダ、プエルトリコ在住のアマチュア選手。指名選手との契約期限は通常、ドラフト会議後2~3週間で、10位までの選手は割り当てられたボーナスプール金の範囲内で契約金が決められる。



