<ヤンキース4-3レンジャーズ>◇25日(日本時間26日)◇ヤンキースタジアム

 ヤンキースのイチロー外野手(39)が、メジャー2度目のサヨナラ弾で「主役」の座を奪った。日本人投手の先発対決となったレンジャーズ戦で同点の9回2死走者なしから、右中間に4号ソロを運び、歓喜のウイニングランを決めた。レ軍ダルビッシュ有投手(26)との今季初対決では、1回に左前打を放ち、日米通算3950安打目をマーク。最後はチーム2年ぶりのサヨナラ弾に酔いながら、仲間にもみくちゃにされた。

 ホームベース上で待つ人垣の中に、ニヒルな笑みを浮かべたイチローが飛び込んだ。ヘルメットを剥ぎ取られ、丸刈り頭を少しのぞかせただけで、歓喜の輪に吸い込まれた。イチローは「めっさ気持ち良かったです」と表情を緩めた。

 内角をえぐる97マイル(約156キロ)の速球をとらえた。「対戦もそんな記憶にない」という右腕シェパーズにすべて95マイル(約153キロ)以上の速球勝負を挑まれたが、一塁走者ガードナーの盗塁死で2死となった直後、1ボール2ストライクからの4球目を強振した。「目をつむって打ってはないけど、そういう感じに近い。全然深みのない打席。思いっきり来た球をガーン、って」と表現した打球は、「もう、いったと思ったね」と手応えに確信したように、右中間のフェンスを越えた。

 メジャーでのサヨナラ本塁打は、マリナーズ時代の09年9月18日、ヤンキース戦で守護神リベラから放って以来2本目となる。偶然にも、今回は9回に登板したリベラに白星をプレゼントする形となった。チームにとっては、76試合目で今季初のサヨナラ勝利だった。レ軍のワシントン監督は「シェパーズなら抑えられると思ったが、イチローが上手だった」と脱帽し、ジラルディ監督は「最高の勝利にしてくれた」と喜んだ。

 対ダルビッシュの「キラー」ぶりも健在だった。今季初対戦となった1回の第1打席で、内角低めの92マイル(約148キロ)速球にうまく腕をたたみ、左前へ5試合連続安打を流し打った。「その日の良い球でゲームを作れるのはダルの能力」と評したが、これで通算は14打数7安打の打率5割。10打席以上対戦した打者では、最もダルビッシュを打ち崩す。サヨナラ本塁打が日米通算3951安打目。4000安打まで残り50本を切り、大記録へのカウントダウンも始まった。

 試合後はフィールドでヒーローインタビューを受け、クラブハウスに戻ると真っ先に、多くの米メディアに囲まれた。黒田対ダルビッシュの投げ合いで注目された一戦だったが、最後はイチローが主役の座を持っていった。「ヘルメットを取ったりするのが僕は好きじゃないし、(ホームインは)ひっそり入っていこうと思っていた。持っていってやろうという意識はなかったけど」と話しながらも、どこか得意顔だった。【水次祥子】

 ▼日本人選手のサヨナラ本塁打は昨年6月7日の青木(ブルワーズ)以来で、通算7本目。イチローはマリナーズ時代の09年9月18日ヤンキース戦で逆転サヨナラ弾を放って以来、4年ぶり2本目。大リーグでのサヨナラ安打は5本目となり、日本人では松井秀喜の6本に次ぐ2位。

 ◆逆転現象?

 イチローの前回サヨナラ弾ではリベラが負け投手、この日はリベラが勝利投手。メジャーで同様のケースは、現楽天ジョーンズ(ブレーブス)が04年5月8日、サヨナラ本塁打でアルフォンセカに白星を付け、07年4月30日にフィリーズに移籍した同投手からサヨナラ弾を放って以来の珍しい記録。