<ワールドシリーズ:レンジャーズ0-4ジャイアンツ>◇第4戦◇31日(日本時間11月1日)◇レンジャーズボールパーク

 【アーリントン(米テキサス州)=大塚仁、四竈衛】ジャイアンツが1954年以来56年ぶりの世界一に王手をかけた。レンジャーズ相手に、3番オーブリー・ハフ内野手(33)の2ランで先制し、投げては新人左腕マディソン・バムガーナー投手(21)が8回3安打無失点の快投で対戦成績を3勝1敗とした。第5戦は1日(同2日)、レ軍リー、ジ軍リンスカムの両エースが先発して行われる。

 格別の思いを胸に、ダイヤモンドを1周した。3回1死二塁。バックスピンの効いたハフの打球は、右翼ポールをかすめてスタンドへ消えた。「打った瞬間、入ると思ったよ」。今ポストシーズン初アーチが、主導権を握る貴重な先制2ランとなった。

 ハフにとって、テキサス州アーリントンは事実上の故郷だった。幼少時にオハイオ州から移り住んだ後、6歳の時、父が職場で事件に巻き込まれ、銃弾に倒れた。その後は、母が女手ひとつで2人の子供を育ててくれた。生粋のレンジャーズファンで、特に現社長のノーラン・ライアンがヒーローだった。旧球場時代から観戦に訪れたのは、100試合を下らない、という。「最上階で1ドルのホットドッグを食べてたよ」。

 90年6月11日にはチケットを持っていたものの、母が仕事疲れを理由に観戦を取りやめた。その試合でライアンが6回目のノーヒットノーランを達成。直後は母に怒りをぶつけたが、その母は苦しい家計をやりくりして「プロ野球選手になりたい」というハフ少年に、打撃ケージを買ってくれた。「あれがなかったら、今の僕はこの場所にはいなかったと思う。僕にとって、特別な1発になったよ」。名門マイアミ大学へ転校する直前まで過ごしたテキサスでの活躍は、忘れがたいものとなった。

 メジャー11年間で通算229本塁打を放ちながら、デビルレイズ、アストロズ、オリオールズと過去の所属チームでは、プレーオフと縁がなかった。待ちに待った舞台で、世界一まで「あと1勝」。「明日も、1勝3敗ぐらいの気持ちで戦わないとね」。敵地とはいえ、故郷でシャンパンを浴びるのも悪くない。