強まる雨を、引き立て役にした。日本ハムのかわいすぎるスラッガー谷口雄也外野手(23)がプロ初の代打本塁打で、勝利へ望みをつなげた。3点を追う8回。自信を持って代打で登場した。相手は球界屈指のエース前田も、球数は100球を超えていた。「甘い球が絶対くると思った」。狙い研ぎ澄まし、初球だった。130キロスライダーをバックスクリーンまで運んだ。今季被本塁打0を誇る難攻不落のマエケンから1号ソロ。敗戦ムード濃厚の三塁側ベンチに、勝利の女神のように勢いを吹き込んだ。

 初舞台で、カープ女子にも負けない魅力を発揮した。札幌から広島入りした1日の23歳の誕生日には、ファンからのプレゼントが詰まった紙袋を手に、人生初の広島へ。ひそかに胸を高鳴らせていた。「球場の雰囲気が楽しみなんです。チャンスがあれば頑張りたい」。本場メジャー仕様を取り入れた未体験の球場。熱狂的なファンの存在も、人気が高い谷口には好奇心をかき立てられる要因の1つだった。

 おとこ気も芽生え始めた。岡やルーキー浅間の台頭で、出場機会は激減。5月は出場9試合でスタメン出場は2回とアピールの場が減った。「それで僕の気持ちが左右するようなら成り立たない」。限られた代打での出場で、インパクト十分のアーチ。9回には押し出し四球で同点を呼び込み、勝利への流れをつくった。「ただ、自分の今出来ることをやるんだという気持ちです」。かわいさの中で秘めた闘志が、光った。【田中彩友美】