阪神ドラフト5位青柳晃洋投手(22=帝京大)が初の甲子園でドタバタの「青柳劇場」を演じた。ロッテ戦の2番手として5回から登板。1球目から10球連続ボール、3者連続四球と球場を騒然とさせた。それでも2イニング目は3者凡退。2回1安打2失点と踏ん張った。金本監督は、変則右腕の潜在能力を評価。開幕1軍の可能性も浮上した。

 1球ごとに歓声とため息が巻き起こる。そのたびにルーキー右腕の表情は引きつった。投げても投げてもストライクゾーンにボールが納まらない。見かねた捕手岡崎がマウンドに駆け寄り、内野陣も集まった。1球もストライクが入らず2者連続四球を与えると、香田投手コーチもベンチから飛び出した。

 「緊張もあったし、制球も乱れました。ここまでの緊張? ないです。大舞台で投げたことがないんで…」。結局、3人目、3球目のストライク判定まで10球連続ボール。まるで心臓の音がスタンドまで聞こえてきそうなくらい。ガチガチだった。

 呪縛から解き放ったのはベテランのジョークだった。2失点を許してベンチに戻った青柳に福留が声を掛けた。「顔色悪いぞ。ロジンみたいな(白い)顔してるぞ!」。笑顔を取り戻した変則右腕は2イニング目の6回は上ずっていた直球を控え、ツーシームを多投。先頭の名球会スラッガー井口から見逃し三振を奪うなど、あっという間に3人を料理。自己最速まであと1キロの143キロを計測した。

 ベンチで鋭い眼光を飛ばしていた金本監督だが、青柳の話題には笑顔になった。「どうなるかと思ったけど2イニング目はきっちりね。ボールに力があった。けっこう(力が)あるよ。その子は。課題もあるけど、十二分に(1軍も)あり得る」。実力は1軍レベルに達しているという判断だ。

 青柳にとっては人生初の甲子園マウンドだった。華々しい球歴があるわけではない。阪神スカウトが注目したのは独特な「下投げロケット投法」に、力強いストレート。本拠地デビュー戦はまさかの逆噴射寸前だったが、秘密兵器として存在をアピール。今後は再び2軍で昇格チャンスをうかがうが、開幕1軍への上昇軌道は途絶えていない。【桝井聡】

<青柳晃洋(あおやぎ・こうよう)アラカルト>

 ◆生まれ、球歴 1993年(平5)12月11日、神奈川県。小5から寺尾ドルフィンズに所属。上手投げがあまりにも下手で、アンダーハンドに変更。生麦中では3番手投手。川崎工科では甲子園出場なし。帝京大3年時に右肘を手術し、4年秋に6勝。

 ◆マンガ コレクションは600冊以上。虎風荘には300冊を持ち込んだ。好きなマンガは麻生羽呂作「今際の国のアリス」。

 ◆家族 母、兄と3人暮らし。兵庫に住む祖母と母が阪神ファン。自身はヤクルトファン。

 ◆サイズ 181センチ、79キロ。大学で15キロ増量。右投げ右打ち。