ニッカンスポーツ・コムでは、新聞紙面で好評の里崎智也氏(日刊スポーツ評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。4回目は「キャプテンは必要なのか?」です。

    ◇    ◇

 なでしこジャパンが惜しくも4大会連続五輪出場を逃した。

 11年W杯ドイツ大会優勝、12年ロンドン五輪銀メダル、15年W杯カナダ大会準優勝と実績上位のなでしこが、予選敗退とは誰が予想していただろうか?

 予選敗退をめぐる検証記事をあちこちで見かける。そんな中、宮間キャプテンと若手に溝があったという内容が引っかかった。

 キャプテンの存在について、いつも私自身思うことがある。プロスポーツにおいて、キャプテンの存在は必要かということだ。

 個人的には必要ないと思っているからだ。キャプテンだから、という理由でやること、やらないことが変わるわけではない。プロなら、核となる選手は率先垂範すべきだし、全員がチームの中心選手だと気概を持って、プレーしないと勝てない。

 ちなみに、プロ野球界でも、選手会長とキャプテンが存在しているチームが多いが、両者の何が違うのか分からない。

 あえて言うなら、選手間の“総選挙”で選ばれるのが選手会長、監督が決めるのがキャプテンといったところか。

 選手会長の選出は、基本、成績が判断基準となる。チームを引っ張ってもらわないといけない選手、勝敗を左右する選手が選手会長に指名されるケースが多く、キャプテンをあえて設けるなら選手会長と兼務させればいいと思うのだが…。

 とはいえ、私自身もロッテでボビーに指名されて、2007年から3年間キャプテンを務めた。しかし、特別に何かしたわけではない。誤解のないように言えば、チームの主力という自覚を持って必死にプレーでけん引しようと歯を食いしばった。キャプテンでも、“肩書”がなくても、その姿勢は特別なことではない。一致団結なしでは勝利はないのだから。

 一般的にキャプテンの仕事と思われがちな「全員の意見をまとめる」「チームを束ねる」のは、監督の仕事だと思う。

 アマスポーツ界などでたまに強いチームは、キャプテンが嫌われ役に徹しているとの美談を聞くが、監督からキャプテンは嫌なこと言わされ、選手からは言いたいことを言われ…。キャプテンは“便利屋”として使われるだけでは酷な話だと思う。

 なでしこの宮間キャプテンへのグチが若手から漏れていたという記事も読んだが、陰で言う前に宮間主将に正面きって意見すべきだ。勝つためにどうするのか、ときには激論も必要だろう。グラウンド内では、年齢の上下など関係ない。短期決戦は早めに手を打たねば、あっという間に流れていく。人間関係よりもチームの勝利が最優先。終わってからでは遅いのだ。

 野球でもサッカーでも、戦況は絶えず動く。試合前に想定したプランが崩れるのは日常茶飯事だ。野球で言えば、試合前、バッテリー間では序盤はストレート系主体で、と配球の打ち合わせをしても、相手の直球狙いが判明したら変化球主体にすぐに変更するのはどのバッテリーも当然の対応策だ。もちろんプラン変更を伴うといっても、戦う前の準備を怠ってはならない。さまざまなリスクを十分にシュミレーションしておくことで、危険を察知する感性も育つ。また、ここ一番での判断が求められる勝負どころでその経験と感性が大事になってくる。

 話はシンプルに。何でもキャプテンに頼ってはいけない。問題解決に1番近いプロの当事者同士がとことん話をして解決すればいい。(日刊スポーツ評論家)

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。