プロ生活に別れを告げた元ロッテ香月良仁投手(32)は先日、第2の故郷である熊本に引っ越した。「朝は手続き。昼から自主トレして、その後は会社で打ち合わせ。慣れるのに精いっぱいです」と話す声は、充実感に満ちていた。

 10月1日に戦力外通告を受けた瞬間「不思議と、熊本に戻るんだろうなと」。福岡の大学で野球はやめるつもりだったが、社会人チームの熊本ゴールデンラークス(現鮮ど市場ゴールデンラークス)の目に留まった。1学年上の兄良太さん(元巨人)と比べ、「自分は大したことない」と思っていた。だが、その兄が「お前には才能がある。なんで真剣に野球をやらないんだ」と背中を押してくれた。チームの母体会社が経営するスーパーでコロッケを売りながら都市対抗に出場。プロの門をこじ開けた。

 決して、華やかな8年間ではなかった。「一言で言うと、しんどかった」と告白した。「僕は素質、見栄えで劣る。チャンスは少なかった。その分、結果を出し続けて順番が回ってくるのを待つしかなかった」。それでも「誰よりも野球に向き合った自負はあります」と胸を張る。試合後のウエートが日課だった。「投手に、そこまで筋力は要るのか」という周りの声にも「何かやってダメなら仕方ない」と黙々と取り組んだ。7年目の昨季、自己最多40試合登板で実を結んだ。

 甘くはなかった。「勝負の年」と臨んだ今季は11試合にとどまり、戦力外に。すると、古巣がコーチ兼任で声をかけてくれた。「地震もあった。僕にできることはスポーツ。熊本を元気づけたい。プロに行きたい子のお手伝い。でも、エースで投げるつもり。恥ずかしくないように」と意気込む。目指すは、自身が投げた08年以来の都市対抗出場だ。【ロッテ担当=古川真弥】