巨人菅野智之投手(27)が“時空”を操る。米ハワイでの自主トレで来季に向け新球のチェンジアップの習得に本格着手している。11月の侍ジャパンの強化試合でソフトバンク武田との会話でイメージが具体化した。ボールの握りは、中指と薬指で直球を投げる感覚で取り組んでいる。最速155キロ右腕が理想とする135キロのブレーキが利いたチェンジアップで打者への「時間差攻撃」を武器に加える。

 菅野の8球種目は4次元の世界へと突入した。縦に落ちるフォークにカーブ、横に動くカットボール、スライダー、ワンシーム、ツーシーム、軸球の直球にチェンジアップが加わる。「打者に時間差をつけたい。目指している球速は135キロ。今はまだ140キロぐらい出ている。直球と全く同じ強さで腕を振って、球速が落ちれば打者のタイミングを外すことができる」。新球に求めるのは軌道の変化ではなく、前後の奥行きを最重要視する。

 理想の球速に到達すれば、プロ入り後の最速155キロの直球との球速差は20キロになる。この球速差をひもとくと直球がホームベースに到達した時、135キロのチェンジアップは2・37メートル手前にある。0秒06の時間差をつくり出すことが出来る。「見逃されたら、あまり意味がない。打者にスイングさせて、出来ればボールを前に飛ばさせたい。引っ張り方向への打ち損じがベストですよね」とイメージ。一瞬、時間が止まったような感覚に陥らせることで主導権を一気に奪う。

 これまではチェンジアップ習得には消極的だった。「縫い目に指をかけずに投げるということがあまり好きじゃない。投手の基本は直球だという考えは変わらないし、変化球はスライダーが最大の武器なので」。抜いて投げる球種には背を向けてきたが11月の強化試合でソフトバンク武田を参考にヒントを見いだした。「武田は縫い目にかける指が違うだけで、直球と同じだとアドバイスをしてくれた」。力が入りにくい中指と薬指を縫い目にかけて直球を投げる動作と同様に腕を振り下ろす感覚がしっくりきた。

 現時点では試行錯誤の真っ最中で習得完了とはいかない。「少しでも奥行きを出せれば投球の幅は格段に広がる。自分の武器を生かすための布石の球種にしたい」。巨人のエースは4次元の世界で勝負を操る。【為田聡史】