Vプランを着実に遂行できているのも、能見さんのおかげや。阪神能見篤史投手(38)がロッテ戦で今季交流戦初先発し、8回途中4安打9奪三振で無失点。最後は救援を仰ぎ、自身の完封勝利は逃したが、快投でチームを連勝に導いた。5月は4試合に登板し、許した失点はわずかに1。月間防御率0・34の安定感。勝ち星はまだ2勝だが、チームに確実に勝利を運ぶ左腕が虎にはいる。

 38歳になった左腕が「黄金の5月」を快投で締めくくった。序盤から落差のあるフォークや抜けのいいチェンジアップを披露。直球のキレも抜群で、ロッテ打線を黙らせた。8回2死一、二塁のピンチを招き、リリーフにバトンタッチ。「低めにいかなくなったので…。あのへんがいっぱいいっぱいということ。非常に疲れました」。この言葉が謙遜に聞こえる。今季最多の9奪三振で、チーム初完封も狙えるほどだった。4安打無失点で、2勝目を挙げた。

 ZOZOマリンの風にも屈しなかった。前夜は先発秋山が珍しく乱れて、7点を失った。能見はこの投球を冷静に見ていた。「向かい風だったので、そのへんも意識して投げた。高めに浮くのを見ていたので…」。同球場は時折、投手がバランスを崩すほどの強風が吹く。この日も例外ではなかった。低めに投じることを徹底。風を味方につければ、変化球が逆に生きる。ポーカーフェースのベテランは、円熟の投球でチームを勝利に導いた。5月は4試合に登板し、防御率は驚異の0・34。26回2/3を投げ、たったの1失点だ。今季の通算防御率は1・87で、リーグでも2位に浮上。月間MVP獲得の可能性も十分にある。

 8回の降板後、ベンチで金本監督が労をねぎらった。会話を交わし、2人で笑い合った。指揮官が内幕を明かす。「どうやら、彼はイニングで疲れるらしいから。(100球の)球数じゃなくて。本人が言うには、だよ(笑い)」。交代の指示を受け入れ、能見らしいひょうひょうとした返答だった。昨年の交流戦ではロッテに敵地で3戦全敗。左腕は好投したが、報われなかった。「昨日勝って、今日も取れたので、よかった」。完封は逃したが、チームの勝利が何よりの喜びだった。