ベテランの一打が試合を決めた。楽天藤田一也内野手(34)が「日本生命セ・パ交流戦」の広島戦に「8番二塁」で出場。同点の8回1死一、二塁でジャクソンから決勝の右前打を放った。5回と7回にも得点機を演出する安打で存在感を示した。先発の岸孝之投手(32)も7回2失点と粘り、フランク・ハーマン投手(33)が来日初勝利を挙げた。チームは広島に連勝し、3カードぶりの勝ち越しを決めた。

 「ヒーローになるチャンスはなかなかない」。藤田は、甘いボールが来たらバットを振ろうと心に決めて打席に入った。同点の8回1死一、二塁。ジャクソンが投じた151キロの速球を右前にはじき返す。「打った瞬間、ヒットになると思った」。自身は一、二塁間での挟殺により憤死したが「(二塁走者の)銀次がかえれる当たりでよかった」と殊勲打を振り返った。

 得点圏での藤田は、いつも以上に燃える。「僕は、ホームランで1発逆転を狙える打者じゃない。だから『勝負どころでしっかり打って目立ちたい』という思いが強い」。プロ入り当初は、「チャンスで回ってきたらどうしよう」と消極的だった。その意識が改善されるきっかけとなったのが、横浜(現DeNA)時代にプロ初スタメンを飾った05年9月1日の広島戦。好機の場面で、当時の田代打撃コーチから「ボール球でも何でもいいから、初球にバットを振れ!」と指示され、プロ初安打、初打点を記録した。藤田は「あの打席から意識が変わりましたね。スタメンで出る試合が増えていくにつれ、『チャンスで打てばヒーローだ』と思えるようになりました」と、モチベーションの変化を語る。

 この日は、チャンスメークでも力を発揮した。1点リードを許した直後の5回、1死一塁から左前打で好機を拡大。同点の7回にも、先頭打者として中前打を放ち、一時勝ち越しの起点を作った。3安打1打点2得点。勝利に貢献した藤田は「下位がチャンスを作れば、1、2番が必ずかえしてくれる。打撃でも引っ張っていきたい」と誓った。

 先発の岸が7回2失点の粘投。シーソーゲームを制し、セ・リーグ首位の広島に連勝を果たした。3カードぶりの勝ち越しに、梨田監督は「この勝利は選手たちも自信になる。この勢いで来週も戦っていきたい」と言葉に力を込めた。13日からの敵地6連戦を勝ちきり、首位の地盤を固めてみせる。【田口元義】