延長12回、広島の4番鈴木誠也外野手(22)は両足でホームを踏んだ。鮮やかなサヨナラ弾で、チームメートからウオーターシャワーと頭をたたかれる手荒い祝福。それでも笑顔で喜びを爆発させた。

 先制された直後の2回にはバックスクリーン左へ同点弾を放った。だが、その後の得点圏に走者を置いた2打席で凡退。「どうでもいいところばかりで、得点圏で打てていない。課題です」。たまりにたまったフラストレーションを最後、バットにぶつけた。

 4番に座り、チームの勝敗の責任を背負う。気がつけば、グラウンドで笑顔が減った。「笑わないととは思っているけど、うまく笑えない。ベンチ裏で笑えても、グラウンドに1歩出るとうまく笑えない」。昨年は野球が楽しくて仕方なかった。今も野球は楽しいが、それ以上に「苦しい」。勝利が何よりの力となる。

 昨年3試合連続決勝弾を放ち「神ってる」と言われたオリックス戦で再び神がかり的な働き。緒方監督は「最後の最後に4番が大きな仕事をしてくれた」と言いつつ「ファンのおかげで勝つことができた。今年はファンの方が神ってたね」と最後まで席を立たなかったファンをたたえた。鈴木の活躍はもう「神ってる」ではなく、いつものことだ。【前原淳】

 ▼広島鈴木のサヨナラ本塁打は昨年6月17、18日オリックス戦で2試合続けて放って以来3本目。3本すべてオリックス戦で打っている。昨年の2本は17日が12回に比嘉から、18日が9回に平野からだった。昨年は同19日のこのカードでも8回に勝ち越しの1発。広島はオリックスに15年から8連勝だが、そのうち4勝は鈴木のVアーチ。