優勝決定弾だ! ソフトバンク柳田悠岐外野手(28)が逆転2ランを放った。西武22回戦(メットライフドーム)で1点を追う4回。1死一塁から左翼ポール際に運んだ。2年ぶりの30号到達。打点、犠飛、出塁率、得点圏打率、長打率と軒並み打撃部門でリーグトップに君臨。3冠王、シーズンMVP返り咲きも視野に入れる活躍で、優勝のかかった試合でも勝負強さを発揮した。

 喜びが柳田の顔ににじみ出た。「まさか打つとは思っていなかった。信じられない。こういう大一番で目標としていた数字を打てたのですごくうれしい。一生記憶に残る試合になりました」。4回1死一塁から左翼に逆転2ラン。8月23日以来、17試合ぶりの1発となる30号を放つと、5回にも右翼に適時二塁打。3打点の活躍で今季98打点とし、優勝に花を添えた。

 前夜は打撃について考え始めると寝付けなくなった。ほとんど眠れないなど独特の緊張感の中で迎えた。「(30本は)もう諦めていた。無理やと思っていた。でも野球の神様が打たせてくれた」。肩の荷が下り、白い歯がこぼれた。

 昨年はシーズン終盤の9月1日に右手薬指を骨折。V逸の瞬間は自宅のテレビの前で迎えた。「ふがいない思いでいっぱいだった。成績にも納得いかなかった」。悔しさを原動力に、復活への道を歩んできた。「去年ダメで、秋からしっかり振り込めたのが一番」。1月のグアム自主トレには丸刈りで出発。「今まで以上にやってやろうという気持ちだった」。キャンプ前からギア全開だった。

 意識改革も実を結んだ。昨年までは打率、出塁率を意識したが、クリーンアップを任される責任感から、今年は本塁打と打点にシフト。打球をより遠くに飛ばすための練習を重ねた。「特に本塁打ですね。適時打とは喜びも違う。打てたらオモロイ」。本塁打の話題になると、子供のような無邪気な笑顔をのぞかせる。

 プロ7年目で初めて技術的にも納得する1発にたどり着いた。6月3日DeNA戦(横浜)で平良から左翼に放った1発。「今までにない本塁打だった。自分ですげーなと思った」。外角低めに落ちる球を捉えて逆方向に運ぶ、かつてない感触をつかみ、内川の離脱後はしっかりと「4番」の座を務め上げた。

 家では1歳8カ月の娘の父親。「抱き付いてくるし、子供がいいリフレッシュになっている」。公園で遊んだり、自宅で子供用のプールに入れてあげることが息抜き。家庭には仕事を持ち込まないのが基本だが、今季は思い立ってバットを握り、部屋の中でスイングを重ねたこともあった。

 3冠王も視野に入れる活躍で今後は個人タイトルにもスポットが当たる。挑戦はまだ終わりではない。【福岡吉央】