「短期の鬼」が真骨頂だ。西武中村剛也内野手(34)が6回、ダメ押しの3ラン。楽天の戦意を刈り取るライナーを左翼席へ運んだ。プレーオフ、CS通算で最多タイとなる8本目の本塁打。強力打線の露払い役が、7番にどっしり居座る。

 CSホームラン男は、こんな絶好球を見逃さない。7点リードで迎えた6回2死一、二塁、中村が1ストライクから真ん中に入った145キロを強く振り抜く。炎獅子カラーに染まった左翼スタンドにたたき込むと、いつも通り表情を変えずにゆっくりとベースを1周。楽天に引導を渡すダメ押し3ランで試合を決めた。

 これまで出場したCS第1ステージはすべて本塁打を放ち、この日で記録を7年連続に“おかわり”。第2ステージ(現ファイナルステージ)を含めたプレーオフ、CS通算本塁打は元中日のウッズと和田に並ぶ8本塁打として、歴代最多タイに立った。記録については「特にないです」といつも通り素っ気ないが、チームに与える影響は計り知れない。3回の中犠飛を含む4打点の活躍に、辻監督は「(本塁打を)打ってくれるという気はしていた。ダメ押しのダメ押しで良かった」とたたえた。

 今季は背中と腰の張りによる離脱もあり、規定打席に到達したシーズンでは初めて本塁打王を逃した。シーズン中は調子を崩した時も「結果にこだわり過ぎてバッティングが小さくならないようにしないといけない」と、試合前にノックバットでロングティーを繰り返した。本塁打に対しては「方向は狙わない」と、強く高い打球でスタンドに運ぶ理想を追い求める。ぶれない練習を繰り返し、勝負どころのCSにしっかりと調子を合わせてきた。

 試合前にはキャプテン浅村を中心に、1つになって戦うことを確認して迎えた大一番。自身の記録に関心を示さない中村は「どんな形でも勝てたことが、初戦だしいいこと。明日も勝てるように頑張ります」と、チームの勝利だけを追い求める。【前田祐輔】