頂点への戦いは、すでに始まっている。DeNAアレックス・ラミレス監督(43)が27日、今日28日に開幕する「SMBC日本シリーズ2017」に向けて先制攻撃を仕掛けた。ヤフオクドームで行われた監督会議で、ソフトバンク工藤公康監督(54)が提案した予告先発を断固拒否した。合意がないため、2年ぶりに予告先発なしでの開催が決定。DeNAの第1戦は井納が予想されるが、真相はベールに包み、幻惑作戦で本番を迎える。
会議の本題は始まる前から分かっていた。両チームの監督同士が顔を合わせる恒例の監督会議。DeNA首脳陣の腹は決まっていた。「できれば予告先発でいきたい」というソフトバンクに対し、青山総合コーチがまずは拒否。再度、提案する敵軍に、ラミレス監督が「うちはしない方がいい。7戦とも予告なしでやりたい」と断固拒否した。前哨戦、まずは先手を取った。
両監督の合意がなければ、予告先発は適用されない。採用したことは過去6度あるが、2年ぶりの「適用なし」が決まった。拒否した思惑について、ラミレス監督は「予告なしにいいも悪いもない。ルールに適用していくだけ」と、涼しい顔でけむに巻いた。
一方で、拒否された工藤監督は「想定はしていた」と冷静に話した。2年前の15年、自身が初めて日本シリーズに出場した時も、ヤクルト真中監督に「ジャンケンで決めましょう」と予告先発を提案。合意されなかったものの、日本一に上り詰めている。
横綱相撲でパ・リーグを制し、CSも突破してきたソフトバンクに対し、リーグ3位から下克上で勝ち上がってきたDeNA。青山総合コーチが「チャレンジャーなんだから、相手が嫌がることをしないと。やれることは全部出す」と代弁するように、勝負に徹したまでだ。
ラミレス監督は、短期決戦だからこそ、采配でチームの力を引き出してきた。CSでは1イニング投手4人費やす「マシンガン継投」や、先発要員の今永、浜口を中継ぎ起用するなど、広島を幻惑し4連勝で突破。頂上決戦では第1戦は井納、第2戦は今永の2人を先発に送り込むことが最有力だが、ウィーランド、浜口、石田を含めた5枚の投手陣を巧みに操る。
交流戦3試合のみ戦ったソフトバンクを「本当に完成されたチーム。だからベストを尽くすために、ケース・バイ・ケースで戦っていく戦略」と敬意を表した上で、終始言葉を濁した。唯一明言したのは筒香をDHではなく左翼で起用することだけ。そして「ソフトバンクが1年間戦ってきた膨大なデータがある。この後、時間を使って分析したい」。手を尽くし、頂点をつかみにいく。【栗田成芳】
◆日本シリーズの予告先発 監督会議で両監督が合意すれば採用され、過去6例ある。横浜権藤、西武東尾と投手出身監督の対戦となった98年横浜-西武が最初。「予告先発でいいじゃないか。正々堂々とやろう」(権藤)「権藤さんがいいと言うならいいよ。面白いことをやろうじゃない」(東尾)と、両監督がほぼ同時に別の場所で提案して実現した。02年巨人-西武は開幕戦の上原-松坂だけ発表。05年阪神-ロッテでは阪神岡田監督が提案し、ロッテ・バレンタイン監督も了承。日替わり打線のロッテに有利といわれ、結果はロッテの4勝0敗。その後も13年巨人-楽天、14年阪神-ソフトバンク、16年広島-日本ハムで採用された。