こんなに頼もしい切り込み役はいない。ソフトバンクの1番柳田が、2試合連続マルチ安打で2連勝に貢献した。1回はDeNA今永の初球に「ギャン詰まり」もゴロで右前打。犠打で二進し、デスパイネの安打でホームへと戻ってきた。第1戦と同じく、初回安打からの先制を演出した。

 そして7回は1死三塁から1点差に迫る適時打。ワンポイントで登場した左腕砂田に対し、高いバウンドの中前打は執念が詰まっていた。「その前の2打席でチャンスをつぶしていたので。1球目に甘い球が来た。ホームランを狙ったけど、あんな球はもう来ない。とにかく1点。前に飛ばそうと思った」。これが中村晃の逆転打、今宮の劇的な本塁生還につながった。

 1番という打順には思い入れがある。「楽しいし、うれしい。あの時のこともよく覚えてますよ」。“あの時”とは、14年の日本シリーズだ。同年シーズン終盤にプロ初1番を経験。シリーズの大舞台でも全5試合に1番を打ち、20打数8安打の打率4割。阪神を退ける原動力となった。

 小、中学校でも1番打者だった。今は身長188センチの立派な体だが、中学卒業時には170センチしかなかった。足が速く1番打者の適性にあふれていた。まっさらなバッターボックスは、野球を始めた頃の原風景にある。だから1番に「うれしい」と言える。

 工藤監督を「欲しいところで打ってくれているのでうれしいし、勝負強いなと思う」とうならせる。残り試合も1番で固定される方針。相手に強烈な圧力を与えられる、規格外の切り込み役が、打線を引っ張る。【大池和幸】

 ▼ソフトバンクは第1戦に続き、初回に1番柳田が出塁して先制。第1戦、第2戦で初回に得点したのは05年ロッテ以来で、ソフトバンクは初めて。第1戦、第2戦とも初回に先制のホームを踏んだのは74年高木守(中日)77年福本(阪急)81年ソレイタ(日本ハム)90年辻(西武)98年石井琢(横浜)に次いで6人目。